未来に接続するクリエイティブ思考

第3回 インターフェースは既知と未知の組み合わせがマスト

REDD inc.の望月さんが語ってきた「これからのクリエイティブ思考」。第3回目は、プロトタイピングで現象化したものと、人々の接点であるインターフェースについて。単純に画面の設計だけではないインターフェースの定義と、その重要性、作るときのコツなどを解説してもらった。

インターフェースとは体験の「接点」のこと

これからのクリエイティブに注目すべき3つの要素のうち、2つ目は「インターフェース」。
この言葉から通常イメージされるのは、アプリやWebの画面だろう。ところが実際には、「接触面」「中間面」「界面」といった意味があり、大きな視点でとらえると、人がモノやコト、現象に触れる接触点と考えることができる。

「例えば、このペットボトルに入った水も、水のままでは持ち歩くことも飲むこともできません。カバンに入れて、いつでも好きな時に飲めるのは、ペットボトルというインターフェースがあるから。ラベルの切込みや商品のロゴ、ペットボトルの形なども、それぞれがインターフェース。それらを総合的に判断して、この商品を選択するための接触点になるというわけです」

望月さんはそこで、インターフェースの例を京都の「清水寺」に置き換える。寺には仏像があり、僧侶がいる。それらが実は、インターフェースなのだという。

「仏教は、OSだと考えることができます。これがないと始まらないけれど、それだけだとふわっとしていて実態がつかめません。寺などの箱ものは、ハードウェアと考えられ、僧侶やお経はインターフェース。実際に人と接触して、思想を伝えるものです」

OS(仏教)は変化させにくく、インターフェース(僧侶やお経)は変えやすい。ハードウェア(寺)はその中間で、変えることはできるがなかなか工数がかかる。

望月さんは、もっとも変えやすいインターフェースを変化させることで人々に新たなインパクトを与えた例として「テクノ法要」を紹介してくれた。テクノの音楽と、プロジェクションマッピングのリズムに乗せて、お経が唱えられる。実は、OSである仏教では、「法要の定義は、光り輝く空間で、ある一定のリズムが唱えられる」ことであり、木魚やろうそくはひとつのインターフェースとして捉えることができる。「テクノ法要」は、仏教の思想を変えずにコミュニケーションの手法を変化させているだけというわけだ。

これにより、それまで興味のなかった人が寺を訪れたり、メディアで話題になったり、クリエイションしたい人が集まったりといった新たなムーブメントが起こるのだ。

未知と既知を混ぜることが大事

それ以外にも、望月さんはIKEAの「PLACE」というARアプリを紹介。アプリを使って、自分の部屋に仮想的に家具を配置できるもの。それにより、実際に購入する前に家具の大きさや色のイメージが確認できる。インテリア全体にその家具のデザインや大きさがフィットするのかどうかを疑似体験することができる。これまで紙のカタログや店頭だった顧客との接点が、ARでバーチャルシミュレーションすることで別の体験に変わる。

もうひとつが「チートス ミュージアム」。スナック菓子のチートスが偶発的にいろいろな形を成すことから、チートスの形状をお宝に見立てることを促進するキャンペーンだ。例えば、リンカーンや自由の女神などさまざまな形のチートスを消費者が見つけ、話題となった。お菓子を食べることが「袋の中に眠るお宝」をトレジャーハントする楽しみに変わる。

「インターフェースを変えるとき、とても大事な法則は『既知のものと未知のものを混ぜる』ことです。すべて既知のものでは退屈だし、すべて未知のものではわからな過ぎて興味がわきません」

例えば、第1回記事で紹介したPechatは、子どもがすでに慣れ親しんでいるぬいぐるみ(=既知のもの)と、おしゃべりができる(=未知のもの)という組み合わせになっている。もしただの“喋るぬいぐるみ”だったら、ぬいぐるみも未知のものとなり、子どもがそこまで夢中にならないだろうと考えられる。

「未知の部分に最新のテクノロジーが必要なわけでもありません。今既にあるものから飛距離が出れさえすればいい。未知のものと既知のものがいい具合にブレンドされると、人は強烈に惹かれます」

インターフェースで大切なのは、触れる人の「未知」と「既知」を絶妙なバランスで混ぜ合わせること。これまでと同じ商品でも、インターフェースを変えるだけで人の体験が大きく変わるのだ。次回は、「これからのクリエイティブ思考」に大切な最後のひとつ、「デザイン」について語っていただく。

望月重太朗さん
REDD inc. 代表取締役、Creative Director、Designer。UMAMI Lab 主宰。デザインR&Dをテーマに、サービス/プロダクト開発、デザイン戦略開発、クリエイティブ教育の開発、海外との協業によるメソッド開発など。