DNAを伝える媒体づくり

第2回 採用サイトはこれまでにないチャレンジを重ねる

独自の社風を大切にしているミキハウス。採用サイトでも、ミキハウスらしさを表現しながら、毎年チャレンジを重ねている。2018年の採用でトライしたのは、動画を使い、入り口を2つに分けること。また、制作の体制を変えて、チーム内での意思疎通にも力を注いだ。2回目となる今回は、人事部 部長宮本周さんに採用サイトにおける独自の戦略を伺った。

統一感を保ちながらサイトの入り口を2つに

栃尾:
採用のWebサイトで、多様性を表す以外に工夫したことはありますか?

宮本:
昨年は、Web制作会社さんと相談して、入り口を2つに分けようと考えました。世界を舞台に活躍する「グローバルリーダー」と国内の店舗で働く「ファッションアドバイザー」の2種類。
グローバルリーダーは、将来的に海外事業や商品企画、マーチャンダイジングなどを担う人材です。ファッションアドバイザーは、主に店舗で働いてもらう人材となります。入社してからの路線が違うため、最初から別枠で採用しようと考えたのです。
統一感を測りながら、それぞれの職種の違いを出すのは難しいチャレンジでした。色の使い方、見出しの感じを変えた異なるイメージを作り出してもらい、採用のトップページを開いたとたん動画として動くようしました。

栃尾:
実際にやってみて、どうでしたか。

宮本:
ページのトップはインパクトが大事なので動画を採用しましたが、そのせいで離脱してしまうのではないかという心配がありました。ただその部分は、容量を軽くする工夫をしてくれたので問題なかったようです。動画でうったえる手法への注目も高まっており、時代に合っていたと思います。

栃尾:
今年も同様の見せ方をするのでしょうか?

宮本:
今年はまた、入り口をひとつにしようと考えています。常にチャレンジですね。グローバルリーダーを希望するとしても、1~2年は国内店舗で基礎的な仕事を経験してもらうことになるので、今年は一緒にしてみようという方針になりました。
学生時代にアルバイトで入り、その後新卒採用にエントリーする方が増えてきました。特に外国の方で。そのため、新卒とアルバイトでそれぞれポータルサイトを作り、マインドやメッセージを深く伝えられるようにチャレンジしていきます。

微妙なニュアンスを汲み取ってもらう

栃尾:
Web制作を依頼する際に、気を付けていることはありますか。

宮本:
「雰囲気」を表したり、伝えたりするのには正解がありません。私たちも「こうしてほしい」を伝える際にあいまいな表現になってしまうことが多いです。だからこそ、それを汲み取って具体的な表現にしてもらえる力には期待しています。場合によっては、出来上がったものが我々のイメージとずれてしまうこともあるわけです。
採用チームで時間をかけて意見を一つにしてきた、非言語の「雰囲気」というものを、作り手には汲み取ってもらいたいと考えています。さらに、それだけでなくこちらの想像を遥かに超えてもらわなくてはならない。そのために、採用方針だけでなく、もっと深いビジネスの根幹部分で共感していただいたり、イベントに顔を出してもらったり、様々な視点からインプットをしてくれます。今のパートナーの会社さんには、そのようなプロセスを経て、言葉だけではない、ブランドに対する理解を深めていただいています。

栃尾:
具体的に、サイトの雰囲気が変わった部分を教えていただけますか。

宮本:
ミキハウスのブランドで最も大切にしているのは「クオリティ」と「安心安全」というキーワード。それを、直接的でなく、後味のような形で伝えたいと常々思っています。ミキハウスは素材と縫製のクオリティは世界一の基準だと自負していますが、サイトの雰囲気からそれらが上手く伝わらないと信用してもらえません。
具体的にひとつ挙げるとしたら、画像のクオリティでしょうか。光の当て方、モデルの捉え方、全体を見たときの統一感に気を使いました。全体で醸し出す雰囲気から、見た人の印象に残る。そういうサイトになったと思っています。

会社としての統一感を保ちつつ、動画を使ったり、職種に応じてページを分けたりと、新たなチャレンジには心配が付きまとう。また、1回うまく行っても、翌年同じ方法が通用するとは限らない。ブランドで大切なものを忘れないようにしつつ、制作会社との繊細な意思疎通を図っていく。第3回となる次回は、変化させるものと、守るものの見極めについて伺う。

宮本 周
株式会社ミキハウス 人事部 部長
1997年入社後、百貨店営業、経営企画、グループ会社経営、営業統括と渡り歩き、現職。人事制度改革と共に経営戦略に則った外国籍社員採用にも力を入れている。

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも