YouTubeはアナリティクスで劇変する

第4回 YouTubeで濃いファンとのコミュニケーション

企業が発信するYouTubeは、テレビCMなどよりも商品やサービスを身近に感じることができる。コメントもつけられるので、相互のコミュニケーションも可能だ。コミュニケーションを取るための工夫を『広報PR・マーケッターのためのYouTube動画SEO 最強の教科書』の著者、株式会社動画屋代表取締役の木村健人さんに伺った。

ユーザーにとって自社のチャンネルはどんな「役割」か
栃尾

YouTubeはユーザーの方とコミュニケーションを取れるメディアだと思います。そのために注意すべきことなどありますか。

木村

ユーザーに嫌がられる動画もあるので、その点は注意したいですね。YouTubeは、おちゃらけた感じの動画もありますが、企業のチャンネルでそれをやると悪い印象を与えることもあります。ある企業の動画には「営業マンがこんなにふざけているなんて、信用できない」というコメントがありました。

栃尾

そうなんですか?

木村

「テレビのバラエティ番組みたいなことをしたい」という見せ方を望む企業担当者は結構います。でも、バラエティ番組って、出演している芸能人のことを視聴者がもともと知っているから面白いんですよね。

栃尾

確かに、素人がふざけてつまらなかったら見ているだけでつらいです……。

木村

ある程度まじめなコンテンツにするほうがリスクは少ないでしょうね。それに、YouTubeチャンネルの役割というものがあるんです。

栃尾

役割、ですか。

木村

ユーザーにとって、そのチャンネルが担う役割です。お気に入りのチャンネルって女性の化粧ポーチみたいなもので、ある程度入る量が決まっています。小さなポーチに、口紅は1本しか入れないと思うんです。

栃尾

なるほど。そうですね。

木村

ユーザーが動画を視聴する目的には「憂さ晴らし」「癒し」「趣味」などいろいろありますが、これが「役割」になります。つまり、自社のチャンネルがユーザーにとってどこの役割に入るかということです。まず、テーマや役割などのチャンネルの軸を決めることが最重要で、コンテンツはその軸から外れないように気をつけるべきなのです。

コメントは承認制にするのがおすすめ
栃尾

YouTubeでファンとの関係深化をしようと思ったら、コメント機能をうまく使った方がいいのでしょうか。

木村

コメントをオフにしている企業は多いんです。炎上を恐れてのことでしょうね。でも、いったんチェックしてから公開するという承認機能を使って運用するのがおすすめです。

栃尾

そういうオプションがあるなら安心ですね。YouTubeは視聴者の匿名性が高く、Facebookなどよりコメントが付きやすい印象があります。Twitterに近いですかね。

木村

コンテンツの種類によりますね。つきにくいものもありますよ。ただ、「高評価」や「コメント」は動画の評価につながるので、多い方がアルゴリズム的にプラスになり、「関連動画」などに表示されやすくなります。

栃尾

どうすればコメントが増えるのでしょうか。

木村

漠然と「コメント待ってます」と動画の中でメッセージングしても、ユーザーは何を書いていいかわからないんです。例えば、How-to系なら「ほかにも質問があれば書いてください」「○○についてご意見ください」などと具体的に何をして欲しいのかを添えて問いかけるのがよいと思います。さらに、それらのコメントに応えるような内容を次回以降の動画制作に活かせば、さらにコミュニケーションが活発になるでしょう。ファンはそういう「共創感」をすごく喜びますから。

他のSNSと効果的に連携するには?
栃尾

YouTubeと他のSNSは連携したほうがいいのでしょうか?

木村

YouTubeを更新したら、Twitterなどで告知するのは効果的。さらには、公開前に少しずつ情報を先出していくのもいいと思います。

栃尾

「もう少しでアップしますよ」とか……?

木村

もう少し具体的な方がいいですね。例えば、YouTuberはその点すごくうまいですよ。「サムネイルをどちらにするか迷っている」とTwitterに投稿するなど、編集のプロセスを出しちゃうんです。見ている人が自分ごとにもなるし、「こんな内容が公開されるんだ」とわかるし、何より期待感を煽れますよね。

栃尾

なるほど~本当ですね。

木村

キャンペーンのプロモーションなどに似ていますよね。注目を集めたい日に合わせて情報を少しずつ出していくやり方です。あとは、ユーザーの行動を促すために、動画のエンディングで「チャンネル登録」を促すのは基本です。「申し込みはこちら」などもいいですね。

栃尾

最後に、動画屋さんの今後の展開についてお聞かせください。

木村

YouTube用の動画制作、チャンネル活性化のマーケティング提案など、動画屋の社名通りの動画関連のお手伝いは変わらずの事業ドメインですが、これから力を入れていきたいのは「テキストマイニング」です。動画というアウトプットを良くしていくためにもテキストマイニングによる市場やソーシャルボイスの分析を積極的に取り入れていきたいと考えています。テキストマイニングでも支援できることあれば、お気軽にお声掛けください(笑)

企業YouTubeでユーザーとコミュニケーションを取るとしたら、コメント欄がとても大事。また、その他SNSとも連携して、効果的に盛り上げていくことも可能だ。これまで、全4回でYouTubeの効果や始め方、運用の仕方などを解説してきた。YouTubeは、プラットフォームとしては無料で使えるツール。上手に活用していきたいものだ。

木村健人さん
1988年生まれ。広島県福山市出身。サンフランシスコ州立大学芸術学部卒。ゲーム制作会社、IT関連会社を経て、動画SEOの黎明期の2016年にYouTube動画SEOサービスを開始。メーカーを中心に企業公式YouTubeチャンネルを手掛け、視聴回数を大幅に改善させる。著書に『広報PR・マーケッターのための YouTube動画SEO最強の教科書』(秀和システム)がある。

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも