近年、ファンコミュニティが注目されてはいるが、上手くいかずに閉鎖となる例も少なくない。成功するための大切なポイントを、オシロ株式会社 代表取締役社長の杉山博一さんに聞いた。
ファンコミュニティにも種類がある
ファンコミュニティもいろいろなタイプがあると思います。いくつか教えていただけますか。
横同士にどんなつながりがあるかによって3つに分けられると思います。「1対マス」「1対n」「1対n対n」があります。
それぞれどんな特徴があるのでしょうか?
「1対マス」は、不特定多数に向けているテレビやラジオなどのメディアがあると思います。相手を特定できていません。「1対n」は、ファンクラブに近い形です。相手を特定できるけど、縦のつながりしかない。「1対n対n」は、相手を特定できて、かつ会員同士の交流があります。最近はこの形が注目されています。
最近は、「1対n対n」のタイプを目指しているコミュニティが多いように思いますね。「オンラインサロン」「オンラインコミュニティ」などいろいろ呼び名があるように思いますが、定義はあるのでしょうか?
しっかりした定義はまだないと思いますが、一般的にはファンが集まっているものを「ファンコミュニティ」と総称され、「1対n」や「1対n対n」のものを「オンラインサロン」と呼ぶケースが目立つように思います。ただ、明確な線引きはありません。OSIROでは、「1対n対n」をファンコミュニティと定義しております。特にサブスク・ファンコミュニティを強みとしております。
ファンコミュニティ成功の定義は
成功するために必要なことをお伺いする前に、杉山さんが考えるファンコミュニティ成功の定義を教えていただけますか。
僕たちの会社では、「1対100の法則」をひとつの定義としています。コミュニティの売上を1として、コミュニティがあるからこそ、本丸の事業が100倍になるという意味です。例えば、あるキャラクター好きのコミュニティがあるとして、会費の売上が1億円なら、グッズや映画、本などの売上が100億円ということですね。
なるほど~! 本業の方によいシナジーが生まれるということなんですね。
そうですね。そのために、僕たちが定義している成功のパターンがもう一つあります。それは「はいる」「なじむ」「はずむ」「にじみでる」というスパイラル。
それは、ひとりひとりの会員さんの状況にフォーカスした見方ですね。
それぞれの人が入って、共同作業するためには、仲良くなる、つまりなじまなくてはなりません。なじんでさまざまなプロジェクトが発生し、楽しくてはずむようになり、一緒に物を作ったりします。これが体験型コンテンツであり、価値共創です。さらに、外に対しても口コミしたくなって、にじみでる状態になるんですね。
そのサイクルがうまくいっていると、成功に近づいていくということなんですね。
そうですね。そう思っています。
コミュニティが成功する秘訣は?
そのサイクルは簡単には作れないと思うのですが、大切なことを3つ挙げるとしたらどんなことでしょうか。
たくさんあるのですが、あえて言うなら、一つ目は「安心安全」ですね。有料であること、クローズであること。誰でも気軽に入れる公園のようなオープンな場では安全性は低いですが、その中に月額制×価値観という鍵がかかった囲いがあれば、入ってくる人に危険な人は少ないと考えられます。なので、有料ということは大事だと思っています。
危険な人がいない、ということは安心安全につながりますね。
二つ目は「余白」でしょうか。余白があるほど、自律が促されます。自分たちで律していくことで、自分たちの居場所になりやすいんです。コミュニティ設計をするときにガチガチにルールを決めず、メンバーが入り込める余地や隙をあえて作っておくことが大切です。
ルールとして少し物足りない、くらいの方が「自分たちの居場所は自分たちで作らなきゃ」という気持ちになりそうです。
最後は「雑談」です。組織の成長とコミュニティの成長はとても似ていて、雑談が大事なんですね。会社組織の場合、効率が悪くても雑談が生まれるようなレイアウトにすることが大事なんです。絆が深まったり、アイデアが生まれたりします。
確かに。リモートワークが増えたことで「雑談が大事だった」と見直されることが増えましたね。
コミュニティを成功させるためのポイントは「安心安全」「余白」「雑談」の3つ。簡単に聞こえて、バランスよく実装するのは難しいだろう。そのために、さまざまな工夫が必要となる。次回は、成功するための具体的な仕掛けを伺っていく。
杉山博一さん
元アーティスト&デザイナー。世界一周後、アーティスト活動開始、30才を機に終止符。ニュージーランドと東京の二拠点居住&外資系IT企業代表を経て、現在は、東京に定住し「日本を芸術文化大国にする」という志を持ち、「OSIRO」を開発。システムだけでなく、サポートも合わせて行い、2020年東洋経済誌「すごいベンチャー100」に選出される。https://osiro.it
栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも



