年商47億円の経営から、ゼロイチを売る仕事へ

第4回 「種まき」なき「収穫」はない。石の上にも3年。

経営していた事業を手放し、その後まったく違うアプローチで新たな事業を進めている安田佳生さん。安田さん曰く、継続することで誰もが成功に近づくことができるそう。そのコツをいくつか教えてもらった。

「種まき」とは集客と商品開発
栃尾

安田さんは「種まき」の大切さを発信してらっしゃいます。具体的にはどういうことなのですか?

安田

具体的には、「集客」と「商品開発」のことです。現代は終身雇用が約束されているわけではないので、会社員の人も種まきをしたほうがいいでしょう。

栃尾

個人でも集客が必要なんですね。集客とはどうやるのですか。

安田

見込み客を作っておくということです。自分が持っているスキルや、サポートできる範囲を増やして、SNSやブログで発信したり、人に会ったり、実際に誰かを助けたりしていくわけですね。つまり、「集客」とは、発信を通じて、どんなことができるのかを知ってもらうことで、将来の来るべきタイミングに向けて潜在意識下に自分の存在を擦り込んでいくことです。

栃尾

なるほど。では商品開発とは、どういうことですか。

安田

提供できるサービスラインナップの拡充です。ニーズがありそうな売れるものを日々作っていきます。ただし、作れば売れるわけではないので、発信したり無料で提供したりして世の中に問うことが大事です。できれば、月に1つくらいは新商品を考えたいところです。

栃尾

そんなに!? 会社員の人もですか?

安田

むしろ、給料が保証されているうちにやったほうがいいです。副業禁止であれば、無償で提供すればいい。無料でやりながら、商品の質を上げていき、実績を積み重ねていくのもいいですよね。無料なら多少チャレンジングなことでも怒られにくい(笑)。

すぐには収穫できないのが雇用の場合と違うところ
栃尾

種まきというからには、気長に育てる必要があるのでしょうか。

安田

種まきは、やり方次第で確実に人生を成功に導いてくれます。成功させるには、ともかく人より長く続けること。普通の人はすぐに回収しようと考えてしまいます。1時間働いたらすぐに給料がもらえる、という世界で働いているからかもしれません。お金にならないことを続けていくのは、意外と困難なのです。

栃尾

そういう人が多いと感じます。続く人は本当にごくわずかですよね。

安田

考え方が「狩猟」ではなく「農耕」なのです。このマインドチェンジができるかどうかがポイント。いずれ安定して大量に収穫できる代わりに、1回目の収穫までは時間がかかるのです。

栃尾

収穫までの目安としては、どれくらい続ければいいのでしょうか。

安田

1年を区切りにする人は多いですよね。2年で辞める人もいる。でもそれでは、短いと思います。

栃尾

もっと続けなくちゃいけないんですね……!

安田

3年は続けたいですね。種まきに失敗する人は、一度に一気にやり過ぎるんですよ。ダイエットをするときにハードな運動や断食をするのと一緒で、続かない。

栃尾

確かに、最初に頑張りすぎると、継続できないことが多いですね。

安田

最初はやる気があるから頑張ってしまうのですが、やる気がなくても続く方法を考えなくてはだめです。苦にならない状態であることが大切で、無理に頑張らなくても続けられる状況をつくるようにするんです。

「収穫」するには顧客に「変化」を見せる
栃尾

収穫とは、お金にすることだと思いますが、そこにハードルはありませんか?

安田

種まき(集客と商品開発)の時点で、ターゲットを決めていますよね。次は、その人が「どう変化するか」を見せてあげればいいんです。

栃尾

変化……ですか。

安田

例えば、新卒採用をしたことのない会社に採用コンサルティングを売るとしたら、「商品を買えば、御社はこんな風に変化します」を見せられればいい。変化したいと思えば、買ってくれます。だからその部分を見える化しなくてはなりません。

栃尾

それをSNSなどで発信するということですか。

安田

SNSに限りません。アート商品だったら個展をやるかもしれないし、サービスなら人に会って説明するかもしれない。

栃尾

なるほど。ターゲットに「変化」を伝えることが大事なのですね。安田さんは、どのような方法を取っているのですか。

安田

僕みたいな経営者向けのサービスなら、商品説明だけではなかなか売れません。無料相談ツアーといって、1回無料で経営の相談を受けます。その時に変化を感じさせて、「継続して経営の相談をしたい」と思ってもらえればベスト。言うなれば、僕はそう思ってもらうのが得意だから、その方法を取っているに過ぎません。

栃尾

自分に適したやり方が大事なんですね。

安田

自分の得意なやり方を組み込むことが「収穫」成功の秘訣ですね。一度、収穫が上手くいくようになれば、自然とポジティブなスパイラルに乗れるので、継続しやすくなるでしょう。

集客と商品開発という「種まき」をして、自分の得意な方法で「収穫」する。農耕のように、無理なく気長に続けることで、確実に成功に近づくのだという。安定した会社に勤めてさえいれば定年まで安心できる、という時代は終わった。これからは、個人がそれぞれに種まきと収穫を意識しなくてはならないだろう。

安田佳生さん
リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。2011年3月30日、ワイキューブが東京地裁に民事再生法の適用を申請後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも