SNSで5億売った男の流儀 第3回 選んでもらうには「個の力」が必要だった 2019-12-18 達人の伝わる広まる SNS オンデーズ オンラインサロン コミュニティ 伝わる・広まるインタビュー 短パン社長 「短パン社長」として有名な奥ノ谷圭祐さん。今でこそSNSを駆使して売り上げをアップさせているが、「個人」として顧客と繋がる必要があると感じたきっかけは、初めて立ち上げたブランドがうまくいかなかったからとのこと。また、知らず知らずのうちにオンラインサロンを始めていたという先見の明も併せ持つ。そんな奥ノ谷さんに、顧客とのつながり方を詳しく聞いた。 何を買うかより「誰から買うか」を大事にする時代 栃尾 初めて手掛けたブランドは、うまくいかなかったそうですね。 奥ノ谷 もともと、別の上場アパレル企業に勤めていたんです。有名な俳優さんを広告に使ってるようなビッグブランドでね。でも、母が倒れたことをきっかけに、父が経営していた今の会社を「手伝って欲しい」と誘われた。入社してすぐに『フラムクリップ』というブランドをゼロから立ち上げました。あまり考えず前の会社で成功していたやり方を取り入れて、同じような「カッコいい路線」のマーケティングでね。でも全然うまくいかず、2年くらい鳴かず飛ばずの低空飛行状態が続きました。 栃尾 どうしてうまくいかなかったんでしょうか。 奥ノ谷 服のブランドは世の中に履いて捨てるほどありますよね? その中で選んでもらうのは至難の業だったんでしょう。僕らのお客さんである卸問屋さんがどこでブランドを選ぶのかと良く考えてみると、「何を買うか」よりも「誰から買うか」が大事だったんです。それからはダイレクトメール広告やチラシに「フラムクリップを担当している短パンをはいた奥ノ谷圭祐です」というように、自分の写真を大々的に出すようにしました。 栃尾 反応はどうだったんですか。 奥ノ谷 反応は劇的でしたね。僕に会うために展示会へ来てくれる人が増えたんです。僕の写真が入ったダイレクトメールを見て来てくれるのだから、きっと僕のことを好きなはず。それからは、僕を好いてくれる人だけに届けられればいいと思い切って振り切った。 一方でクレームもありましたよ。「ふざけてんのか」と会社に電話が来ることはしょっちゅうでした。まぁ、筋トレ系雑誌の表紙風に上半身ハダカの写真とか載せたりしてたからね(笑)。 発送する商品には手書きメッセージを同封する 栃尾 SNS発信とはいえ、リアルな触れ合いは大事なのですね。 奥ノ谷 実は、最近の若者たちは、洋服を買うときに接客を受けていない人が多いんです。メルカリやZOZOなどのネット販売はもちろん、店舗でも接客しないユニクロやGUでしょ。ついには、セルフレジや自動支払いなんかも出てきてる。だから、そういうものに飢えているんだと思います。 栃尾 大事にされる感覚みたいなものですか? 奥ノ谷 というよりも、人と触れ合うってことなのかもしれない。人ってあたたかさに触れないと、寂しいですよ。顔が見えなかったり息遣いや体温を感じられないネットやバーチャルばかりではなく、リアルで愛情を感じる場所が必要なんだと思います。 栃尾 商品発送の時に手書きのメッセージを書いているのも、そういう理由なのでしょうか? 奥ノ谷 買ってくれた人を喜ばせたい、という思いですね。はじめはすべての人に7~8行くらいメッセージを書いていました。Facebookで注文を取っていたから、その人のプロフィールや投稿を見て、職業や趣味と関係あることを書いたりね。700人に手紙を書くのに3日以上かかった挙句に、腱鞘炎になりました(笑)。今はあまりにも注文数が増えてしまったので2~3行しか書けないこともあります。本当に忙しかったら「ごめんなさい。今回は手紙書けません」ってSNSに投稿します。 奥ノ谷 そうすると、「書かなくていいですよ」と言ってくれる人もいます。その一方で、手紙がなくなったから買わない、という人もいるんだと思います。でも、それでいい。僕のことを好きな人に買ってもらえればいいんです。 5年前から意識せずにコミュニティ運営を始めていた 栃尾 お客様と、SNSを通して密につながっているんですね。きっかけはあるのでしょうか。 奥ノ谷 5年前にスタートしたFacebookのグループページでしょうか。現在は1200人くらいいます。今思えば、最近はやりのオンラインサロンの走り。もっとも、僕の場合は無料ですけどね。商品が届くと、外向けのSNSやブログだけでなく、Facebookグループページにもコーディネート写真を投稿してくれるわけです。そこでお客さん同士の交流も始まり、コーディネートの仕方だったり、時には洗濯の仕方をクリーニング屋の社長が教える、なんて場面もありました。 栃尾 何も知らずにオンラインサロンを始めていたのはすごいですね。 奥ノ谷 最近、「俺、前からやってたじゃん」って思ったんですよ。コミュニティを作ろうと思って作ったわけではない。いつも購入してくれる人や、リツイートしてくれる人を喜ばせたいという思いで続けていただけだったんですよね。 手書きのメッセージやオンラインサロンなど、顧客との接点を密にしてきた奥ノ谷さん。それは、自分の写真をDMやチラシに印刷することからスタートした。担当者を前面に出すことで、顧客にはその商品を「選ぶ理由」ができるのだ。大手企業にもSNS研修をしているという奥ノ谷さん。次回は、なぜ大手企業がSNS研修をするのか? その真相を伺っていく。 Facebook-f Twitter 「いいね」を購入につなげる 短パン社長の稼ぎ方奥ノ谷 圭祐 (著) ご購入はこちら 奥ノ谷圭祐さん株式会社ピーアイ代表取締役社長。通称「短パン社長」。洋服に限らず、カレー、コーヒー、米、ビールも販売。短パンビール部といったコミュニティも作る。ブランド「Keisuke Okunoya」はSNSのみの販売で5億超え。ブログは毎日欠かさず書き続け間もなく10年。5月には短パンフェスを開催。12月に初の著書『「いいね」を購入につなげる短パン社長の稼ぎ方』を出版! 栃尾江美ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも 次回>> 第4回 個人ブランディングは中小企業に限らない <<前へ 1 2 3 4 次へ>>