SNSで5億売った男の流儀

第1回「共感」を生む発信は、特定の誰かの役に立つこと

「短パン社長」として、テレビに何度も出演している奥ノ谷圭祐さん。SNSを使ったオリジナルアパレルブランドの販売に成功し、5年間で5億円以上を売上げている。1年中短パンで過ごすという特徴だけでなく、SNSでの施策が成功につながっている。コツは、「あの人の役に立つ」こと。その秘訣を聞いた。

10年前からブログをスタート。TwitterやFacebook、Instagramを次々と
栃尾

奥ノ谷さんはネット上でたくさんの発信をされて、それにより事業を成功させているように見受けられます。改めて、現在どんな発信をしているのですか?

奥ノ谷

ブログが一番長く、来年の1月19日で丸10年になりますね。1日も欠かしたことがないんです。Livedoor Blogから始まり、Ameba Blog(アメブロ)に変わり、5年ほど前からオリジナルドメインのブログを立ち上げました。
Twitterのアカウントを開設したタイミングは古いのですが、活発的に投稿し始めたのは3年くらい前から。Facebookはその前の4~5年前からかな。Instagramは、アカウントは持っていたもののあまり使っていなくて、ここ1年ほどで急に始めました。

栃尾

時代とともに発信する場が増えているんですね。最も効果があるのはブログですか?

奥ノ谷

FacebookもTwitterもブログのリンクを貼れるので、相乗効果ですね。SNSを使う前は、直接ブログを見に来てくれる人ばかりでしたが、SNSが普及し始めてからはSNS経由が多い。拡散されやすいのでアクセス数もぐっと伸びましたね。
以前は効果が高かったFacebookも、今の若い人はもうあまり使っていない。TwitterやInstagramしか見ていないから、僕もそれらを使うようになっていきました。

日常のことを書いていたら「教えてほしい」人が出てきた
栃尾

ブログやSNSでは、どんな内容を投稿しているのですか?

奥ノ谷

もちろん、展示会のお知らせや商品紹介など、PRとしての使い方もしています。でもほとんどは、日常のできごとなんですよね。朝カフェでコーヒーを飲んで、昼はカレーを食べて……。観た映画のことや、飲みに行ったことです。これだけ話すと「同じような投稿をしている人は多いじゃないか」と感じるかもしれません。でもそのほとんどは「カレー食った」「みんなと飲んでて楽しい」といった投稿。それだけじゃ、誰も興味がわかないんです。僕は日常のことにしても、「面白くて役に立つこと」を投稿するようにしています。例えば、食べたカレーがすごく美味しかったら、その店の情報も併せて投稿する。そうすれば、その投稿を見た人が食べたくなった時にすぐ行けるじゃないですか。

栃尾

確かにそこまで書いている人は多くはないと思います。そういう投稿をするようになったきっかけはあるのでしょうか?

奥ノ谷

いつも行くお気に入りのカレー屋をFacebookに投稿していたら、展示会に来てくれた方が「あのお店、どこにあるの?」と聞いてくれることが多かった。また、Twitterで映画やビールのことを投稿したら、それに対して反応してくれる人や、「教えてほしい」と言う人が出てきた。それで、お気に入りの店の情報をもっと詳しく紹介することが、見てくれている方のためになるんじゃないかと思ったんです。
投稿がつまらなかったら、「で、どうしたの?」「だから何なの?」と思われて終わり。僕はいつも「あの人の役に立ちたい」と思って投稿しているんですよね。

栃尾

「あの人」というのは、知っている特定の人なのですか?

奥ノ谷

Twitterなら、会ったこともない人の場合もありますよ。「この人に向けて発信しよう」と想定して、ピンポイントでツイートする。ひとりにめがけた発信が、ほかの人の「私も行きたい」「私も食べたい」と広がっていくんですよね。

「僕、実は愛情深いんです(笑)」
栃尾

フォロワーの方に対して、どんな思いで接していますか。

奥ノ谷

友だちだと思っています。僕が取り扱っているブランドは、日本人全員に買ってもらおうと考えているわけではない。僕を見て「面白いな」「好きだな」と思う人が買ってくれればいいんです。だから、僕の友だちのために発信する。友だちはクレームを言ってこないしね。僕、自分で言うけど、見かけよらず友だちには愛情深いと思っているんですよ(笑)。

栃尾

SNSだけでなく周囲の人にも同じような気持ちですか?

奥ノ谷

同じですよね。僕は経営者の友だちが多いんです。こう言ったらなんだけど、経営者はダサい人も多い(笑)。でも経営者って、セミナーや会合、総会であいさつするなど、人前に出る仕事ですよね。だから「おしゃれしなきゃ駄目だよ」とアドバイスして、「短パンツアー」と称して服を買うときに同行してスタイリングしてあげたりしてるんです。
僕はセレクトショップのユナイテッドアローズが大好きなので、お店に一緒に行って僕が接客する。もちろん友だちだから、スタイリスト代はもらわず、ご飯をごちそうになるくらい。身近な人からもっと楽しませたい、と思っています。もちろん、その「短パンツアー」もSNSで発信しますよ!
1年中短パンで過ごしているのも、期待してくれる人のため。以前は1年の1/3は短パンじゃなかったのですが、ある時お客さんに「どうして短パンじゃないの?」とすごく残念がられたんです。だから、その時から1年の3/3を短パンで過ごすようになりました。正直、寒いですけどね!

サービス精神にあふれ、取材中もサービスフルに楽しませてくれる奥ノ谷さん。そのような姿勢が、フォロワーの人たちにも伝わっているのだろう。次回は、共感してもらうだけでなく、買ってもらうために何が必要なのかを深堀りしていく。

「いいね」を購入につなげる 短パン社長の稼ぎ方
奥ノ谷 圭祐 (著)

奥ノ谷圭祐さん
株式会社ピーアイ代表取締役社長。通称「短パン社長」。洋服に限らず、カレー、コーヒー、米、ビールも販売。短パンビール部といったコミュニティも作る。ブランド「Keisuke Okunoya」はSNSのみの販売で5億超え。ブログは毎日欠かさず書き続け間もなく10年。5月には短パンフェスを開催。12月に初の著書『「いいね」を購入につなげる短パン社長の稼ぎ方』を出版!

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも