クラファン・マーケティングのススメ

第2回 クラウドファンディングはストーリーが欠かせない

数々のクラウドファンディングを成功させてきたクラウドファンディング・アドバイザーのぺーさんに聞く連載の2回目。クラウドファンディングで支援してもらうために欠かせないのは「ストーリー」だと言う。なぜ必要なのか、どうやって「ストーリー作り」をすればいいのか。具体的なところまで詳しく伺った。

ストーリーは絶対に必要
栃尾

クラウドファンディング(以下、クラファン)で情報を発信する際、最も大切なことは何でしょうか?

ぺー

いろいろありますが、「クラファンならでは」という意味では、「ストーリー」だと思います。

栃尾

「ストーリー」とはどんなものを指すのですか?

ペー

キーワードは「共感」ですね。ストーリーを活用すれば、人が共感してくれるものを発信できます。支援するときの心理として「この部分に共感する」というのは「お金を出す言い訳」みたいなもの。それを用意してあげることが大切です。

栃尾

具体的には、どういう内容になるのでしょうか。

ペー

もし、商品を売るだけなら、ECサイトを使えばいいし、店頭販売だっていい。それを「今回クラファンにしたのはこういう理由です」という内容ですね。例えば「応援してくれる仲間が欲しい」「社内稟議が通らなかったけどどうしても実現したい」という正直な部分をドラマティックに、嘘にはならないよう少し大げさに演出する。前回説明した8つある目的のどれかを、いやらしくない形で伝えてあげることかなと。

栃尾

確かに、クラファンをやるに至った情熱的な理由があれば、共感しやすくなる気がします。

ペー

「作りたいからお金をください」だけでは人は集まらないから、「なぜクラファンをやりたいのか」と理解してもらったほうが支援してもらいやすいし、応援してもらいやすいんです。

自分の言葉で伝えることが大事
栃尾

ストーリー作りで大事なことはありますか?

ぺー

正直に、自分の言葉で伝えることです。個人の想いが強いなら、自分が前に出て一人称で書いてもいいし、チームでやっているならチームの想いでもいい。人の想いが見えた方が、リアリティがあります。例えば、手書きで書いたものをスキャンして載せてもいいですよね。

栃尾

とはいえ、「自分の言葉で語る」って、けっこう難しいような……?

ぺー

そういう方にアドバイスするのは、クラファンのページを作るときに、せめて最初と最後にはしっかりと自分の言葉を入れること。例えば、アイドルのプロジェクトなどは、全部スタッフが書いている、なんてこともある。でも、最初と最後だけは本人が書いた方がいいです。

矛盾があると、見ている人は一気に醒める
栃尾

ストーリー作りでやってはいけないことや、注意点などはありますか?

ぺー

「ストーリー」に限ったことでもないのですが、矛盾が生じるのはよくないですね。例えば、「本」を作るプロジェクトで「集まったお金はすべて本の印刷費に使わせていただきます」としか書かない人がいますが、実際は、印刷費以外にも本を発送するために梱包費や送料もかかるし、クラファンサイトに支払う手数料もあるし、さまざまなグッズをリターンにしていたらその制作費もあるし……と、実際にかかるお金はちゃんと書いた方がいい。読んでいる人は思い入れが強いほど、矛盾があると一気に醒めるので気をつけてください。

栃尾

共感や思い入れが大切なのはわかりましたが、人は「共感」するだけで支援してくれるのでしょうか……。

ぺー

実際に支援してもらうには、「共感」があったうえで、魅力的なリターンがなくてはなりません。純粋な寄付のように支援してくれる人はいるかもしれないけど、さほど多くないと考えておいた方がいい。

栃尾

どんなリターンが魅力的なんでしょうか?

ぺー

リターンを考えるにあたって「クラファンで支援した方がいい理由」を作ってあげると支援されやすくなります。わかりやすいのは「安い」。大幅な安さならなお効きます。値引きが少ししかできないなら、クラファン内でしか買えないような「限定」の方が効きます。あとは、「発売日より早く届く」とか、「確実に入手できる」というのも、実はプレミア性があるんです。ともかく、一般販売よりもメリットを感じてもらえるように設計します。内容としては、代表的なのは、「お礼メール」「実物」「記念品」「グッズ」「経験や体験」「イベント招待」「クレジット(名前を載せる)」「サイン入りグッズ、色紙」など。この中で選びながら、魅力的な要素を付けていくとよいでしょう。

「情熱的なストーリー」が、読む人の共感を生む。表面的な建前や嘘でなく、自分の言葉で正直に書いた方がいい。ある程度の演出は必要でも、真摯な姿勢にひとは集まり、応援するというのは納得。ストーリーを考えたのちには、ページ作りが待っている。こちらもとても重要で、大切なポイントがあった。次回は、ページ作りのコツや注意点について伺う。

ぺー@クラウドファンディング・アドバイザー
今までにクラウドファンディングを2度実施し、合計4,500万円、7,000人以上の支援を集める。その時のノウハウを元に、クラウドファンディングに挑戦したい人に対してサポート・コンサルティングをしている。マーケティングの他、iPhone(スマホ)に詳しく、行政書士の資格を持つなど多彩。プロフィール画像は、漫画家三田紀房先生のドラゴン桜2が好きで描いてもらったもの。noteでクラウドファンディング基礎講座(https://note.mu/peee)を連載中。問い合わせはTwitterのDMで https://twitter.com/pe_e_chan

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも