SEO&デジタル広告の最新事情

第4回 TwitterやFacebook、YouTube……SNS広告の使い分け

デジタル広告には欠かせないSNS広告。TwitterやFacebookと媒体はさまざまだが、それぞれ向き不向きがある。Web広告支援のHagakure代表、奥雄太さんに、SNS広告の使い分けを伺った。

Twitter広告は短期的なキャンペーンに
栃尾

デジタル広告というと、最近はSNSに出稿するケースも多いですよね? どんなSNSがありますか?

Twitter、Facebook、Instagram、LINE、YouTubeなどでしょうか。

栃尾

LINEもあるんですか?

ニュースやタイムラインですね。20代~40代くらいの人たちが結構見ているんですよ。

栃尾

そうなんですね。ひとつずつ、特徴や向き不向きを教えていただけますか。

Twitterは配信システムがそれほど精密に作られていないので、コンバージョン率を高めるのは難しい。ただ、他の媒体よりもクリック単価は安いので、量を増やしてコンバージョンにつなげることはできます。

栃尾

向いているのはどんな商材ですか?

スマホアプリや電子書籍などの相性がいいですね。あとは、プレゼントキャンペーンなども、リツイートされやすいので向いています。設定した瞬間に表示回数が増えるようなアルゴリズムになっていて、CTR(Click Through Rate:クリック率)が高ければ引き続き配信されますが、低ければ配信されなくなります。配信開始から24時間くらいで、クリエイティブの善し悪しが評価されることになります。

栃尾

すぐに結果がわかるんですね。

もし24時間後に結果が悪かったら、クリエイティブの差し替えを検討していく必要がありますね。

FacebookやInstagramは最もターゲティングしやすい
栃尾

Facebookはいかがですか。

Facebookは広告配信のアルゴリズムがとても精緻にできています。人材とか教育とか、B to C、B to B問わず幅広く活用できます。何より実名登録ですし、生年月日、住まい、職業なども自分で入力している。ユーザー情報がかなり正確なんですね。

栃尾

確かに。すべて細かく設定しています。それが広告に利用されるというわけですね。ただ、若い人が少ないという課題はありませんか?

Facebook広告は、Instagramにも同時配信できるので、若い人にもリーチできます。ユーザーがアカウントをFacebookと連動させてさえいれば、Instagram内では匿名であっても、Facebookに登録された正しいユーザー情報を引っ張ってきて正しくリーチできるんです。

栃尾

なるほど……すごい。

ターゲティングではまさに最強といえますね。また、FacebookのアルゴリズムはPeople Firstなんです。ユーザーがサービスを利用しているスタイルに合わせて広告が配信される。例えば、Instagramの動画をよく見る人には動画広告、静止画をよく見る人は静止画の広告、複数枚画像によく「いいね」する人は、複数枚画像の広告が配信されやすいようになっています。

栃尾

おおお。では、広告を出す側は、全部を用意しておくのですか。

はい。全部のフォーマットを用意しておいた方がいいですね。

栃尾

Facebookならではのテクニックはほかにもありますか?

リーチアンドフリークエンシーという配信もあります。何人の人にリーチし、一人当たりのフリークエンシーを予め決めて配信できる方法です。広告配信のシナリオとクリエイティブを事前に設定しておくことで、クリエイティブの異なる広告をステップ的に順番に見せていくことができます。ブランディングで使われることが多いです。例えば、最初は商品の利用シーンを漠然と見せておいて、だんだんブランド名や社名を紐づけて見せるようなシナリオを組んでおけば、商品が提供するベネフィットをブランド価値に変換できるなどが可能です。反対にブランドが強い場合には先にブランドを見せておいて、徐々に商品に落とし込んでいくなどもできますね。

栃尾

何度も見せて印象付けていくんですね。

認知だけなら3~4回が適切だと思います。その後詳しく知ってほしいなら、別の広告クリエイティブに移っていくように設計します。

​YouTubeは認知目的の広告が多い
栃尾

YouTubeはどんな商材に向いていますか?

YouTubeは幅広い商材に対応できます。「知ってもらう」「好感を持ってもらう」といった認知目的が主ですね。コンバージョンを目的とするなら、即物的にリスティングやSNSのほうがいいでしょうね。YouTube広告をクリックしてそのまま買うという購買行動が少ないからです。

栃尾

動画を見る前や、途中に挟まれる動画ですよね。確かにクリックはしたことないかも。

特に認知向けに使われるのがバンパー広告といって、6秒以内のスキップできない広告です。簡潔に印象付けるのに向いていて、非常に認知効果が高いと言われています。

栃尾

なるほど、強制的に見せられるんですね。確かに6秒程度なら、離脱する前に終わる気がします。他にはどんな種類があるのですか?

いくつか種類があります。YouTubeの中でもコンバージョンを取りやすいものもあり、 True Viewアクションといって動画の後にリンクを掲載できるもの。他にもインストリーム、ディスカバリーなど動画広告のフォーマットが複数用意されているので、目的に応じて使い分ける必要があります。

栃尾

なるほど。YouTubeならではのポイントはありますか。

クリエイティブの観点でほかの媒体と違うのは、音声が聞かれる前提だということです。同じ動画広告でもInstagramのストーリーズやFacebookなどは消音設定がデフォルトなので、音声がなくても大丈夫なように作る必要がありますが、YouTubeは音声がデフォルトで流れるので「音」がとても大事。媒体特性に応じてクリエイティブを適応させる必要があるんですね。

​TikTokやLINEニュースは発展途上
栃尾

TikTokは、若い人向けに適しているイメージがあります。

10代後半くらいのユーザーが多いので、無料アプリやコンビニなどで買える安価な非耐久消費財など、サービス利用にお金がかからないか、安い商材が向いています。ただ、広告のプロダクトとしてはまだまだ発展途上な印象です。

栃尾

クリエイティブの面ではいかがですか。

YouTube同様に、音声ありで見られるのは大きな特徴でしょうか。また、シェアされやすい動画広告にしていくことが大事ですね。その点がYouTubeとは違います。マクドナルドの#ティロリチューンキャンペーンというのがあったのですが、マクドナルド店舗でポテトができるときに流れるティロリ♪ティロリ♪という誰もが知っている音楽をBGMにして、若者たちがマクドナルドの店舗内などでダンスする動画が日本中を席捲したことがありました。ものすごくブランドアップに寄与したキャンペーンと言われています。

栃尾

なるほど。確かにあのポテトのティロリという音は、耳が覚えていますね。それに、確かにYouTubeは自分で楽しむことが多いのでほぼシェアすることはありませんね。最後に、LINEはいかがですか。

こちらもまだそれほど整えられていないです。LINEニュースやタイムラインは女性が多いので、アパレル系など女性が買いやすい商材は相性がいいと言えます。LINEはまだFacebookほど個人情報を獲得していないので、「このサイトに来たことがある」というリターゲティングが狙いやすいです。LINEは、日本最大のSNSと言われていて、利用者が圧倒的に多い。トークツールやタイムラインに加えて、漫画やゲーム、株などの複合的なサービス展開していることが特徴で、コミュニケーションツールとしてだけでなく、まさにライフツールと呼べるような生活の根底に根付いたサービス。ですから、広告的にもポテンシャルはとても高いですね。

栃尾

公式アカウントは今でも効果的ですか?

友だち追加は非常に効果的な施策のひとつです。友だち限定で情報を配信したり、クーポンを発行したりできるので、LTVを高めるための施策になりますね。

SEOやWeb広告は日々変化している。知らないだけで損をすることもあり、最新動向のチェックは欠かせない。SNS広告は特に、商材の向き不向きを踏まえて選び、クリエイティブにも反映させていきたいところ。古い価値観にとらわれず、新しいツールや手法で効率的に集客していくべきだろう。

奥雄太さん
株式会社Hagakure代表。
多くのベンチャー企業の広告運用を支援し、事業を拡大させた豊富な実績あり。少ない予算でも丁寧なWeb広告運用で成果を最大化し、ベンチャー企業・スタートアップで不足しているリソースやナレッジを提供している。事業成長に必要なWeb広告スキルを学べるスクール「デジプロ(https://degipro.com/)」を運営。

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも