SEO&デジタル広告の最新事情

第3回 リスティング広告は「マッチタイプ」のミスに注意

Web広告に詳しいHagakure代表の奥雄太さんに、SEOやWeb広告のコツを伺っていく。第3回目は、Web広告の中心であるリスティング広告。自動化が進む中での失敗ケースもあるという。押さえておくべきポイントを教えていただいた。

最近のリスティング広告は自動化の波
栃尾

デジタル広告と言えば、Googleの検索結果ページに出す広告が代表的だと思います。改めて基本的な仕組みを教えていただけますか。

GoogleやYahoo!の検索結果のように表示する「リスティング広告」は今も活用されています。「検索連動型広告」とも言い、キーワードで表示されるページの広告枠を入札して買うイメージです。

栃尾

いろいろと細かなコツはあると思うのですが、特に最近の流れを教えていただけますか?

これまで手動でやっていたことが自動化され、人が手をかける必要がなくなってきています。以前はキーワード単位で値段を決めて入札していましたが、それも自動でできるようになっています。

栃尾

どんな仕組みなんですか?

目標を設定しておくと、GoogleやYahoo!が入札価格を自動的に決めてくれるんですね。

栃尾

目標はどんな指針で決めるんですか?

CPAとROASが代表的です。CPAはCost Per Acquisitionの略で、コンバージョン1件にかかる値段です。例えば、1件のコンバージョンを取るのに5000円まではかけられる、というように設定します。ROASはReturn On Advertising Spendの略で、広告費用に対する売上を設定します。例えば、10万円の広告費をかけて、広告経由で20万円の売上があれば、200%となります。

栃尾

サイト上にコンバージョンを設定しておくんですね。

コンバージョンは「お問合せ」「資料請求」「商品の購入」などいろいろあると思いますが、コンバージョンタグをページに埋め込んでおくと、そのページを開いたときにコンバージョンとしてカウントされます。ですので、「ご購入ありがとうございました」というようなサンクスページに仕込まないと意味がありません。カートに入れたけど、そこで離脱してしまうケースも多いですから。

栃尾

なるほど。数値を決めるときの注意点はありますか。

いずれも適切な値にすることが大切で、例えば、CPAが本来5000円くらいかかるのに、コストを抑えようとして入札金額を500円と設定してしまったら、厳しすぎて全く広告配信されなくなります。逆に入札設定を1万円にすると入札ハードルが低すぎて、あまり買ってくれなさそうな効率の悪いキーワードに対しても広告が配信されてしまいます。

よくある間違いは?
栃尾

やりがちな失敗はありますか?

デフォルトのままコンバージョン数を最大化する設定にしておくと、効率度外視で入札してしまいます。コンバージョンが取れても、CPAが高くなるんですね。価格の高いビッグワードに入札してしまうということがあり得ます。

栃尾

自動で入札するから、設定の意味を把握していないと大変ですね。

他に「マッチタイプ」も確認しておいた方がいいです。

栃尾

マッチタイプとは何ですか?

「キーワードを拡張させる度合い」で、「完全一致」や「部分一致」といった設定があります。

栃尾

拡張……ですか。

例えば、「航空券」というキーワードを設定した場合、マッチタイプが「部分一致」になっていると、Googleが関連すると判断した「羽田空港」「飛行機」といったキーワードにも広告が出てしまうのです。意図しない検索クエリにも広告が出るようになるので、関連度の低い検索クエリから流入してしまうとコンバージョン率は下がります。

栃尾

無駄が出てしまうんですね。

端的に言えば、設定を間違えると、お金を損してしまうんですよ。

細かなターゲティングも可能

コンバージョン率を上げるという観点で言えば、ターゲティングも大事なポイントです。

栃尾

ターゲティングですか。

同じ検索ワードでも、その人の過去の行動や属性によって、コンバージョンのしやすさが変わりますよね。例えば、航空券の購入サイトの場合、自社サイトに昨日来た人と、1年前に来た人では、コンバージョンの確度が変わります。

栃尾

確かにそうですね。昨日も今日も見に来ているなら、本気で買いたいと思っていそうです。

そういった情報を、Googleにたくさん与えておくことがポイントです。「こういう人が検索したら、いい感じの入札にしてください」ということです。

栃尾

そんなこともできるんですね!

過去に訪れたことのあるページや、普段の検索行動、YouTubeでよく見ているもの、住んでいる地域など、ターゲットとなる人の情報を与えれば与えるほど、広告配信の精度が高くなっていきます。

自動化されて工数を減らせるとはいえ、設定を間違えると無駄に入札してしまうこともある。目標値を適切に定めるのはもちろんだが、ここで挙げた「マッチタイプ」を確認するのを忘れないようにしたいもの。次回はTwitterやFacebook、YouTubeなど、SNSの広告の適切な使い分けを聞いていく。

奥雄太さん
株式会社Hagakure代表。
多くのベンチャー企業の広告運用を支援し、事業を拡大させた豊富な実績あり。少ない予算でも丁寧なWeb広告運用で成果を最大化し、ベンチャー企業・スタートアップで不足しているリソースやナレッジを提供している。事業成長に必要なWeb広告スキルを学べるスクール「デジプロ(https://degipro.com/)」を運営。

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも