オンライン時代のキャラクターとマーケティング

第2回 マーケティングにキャラクターを起用する意義とは

マーケティングやプロモーションにキャラクターを活用することには、単に親しみやすいということ以上に、いろいろな利点があるようです。しかし、単にキャラクターがいれば成功するというわけではありません。今回は、これまでの事例から効果的なキャラクター起用のポイントをお聞きします。

作り手の理解度が生み出す「分かりやすさ」
WIT

キャラクターを活用したマーケティングやプロモーションには、どんな成果が期待できるのでしょうか?

家田

では事例を挙げてご紹介しましょう。まず、野村証券様の「NISAの村」です。若い世代へ向けてNISA(少額投資非課税制度)の理解促進を目的としたキャンペーンで、「秘密結社 鷹の爪」が起用されたものです。「NISAといえば野村」と認知を広げたいというご要望から、「NISA野村」→「NISAの村」と名前はダジャレなんですけど、これは先方にもウケたと聞いています(笑)。
もちろん名前だけでなく、制度の仕組みやメリットをわかりやすく解説する動画を制作したり、都内の貸し農園で野菜を育てる”リアル『NISAの村』”、SNSでの発信、さらに収穫した野菜でBBQしながらNISAを学ぶイベントなどの施策を展開しました。

WIT

単にビジュアルとして起用されただけではなく、しっかり内容に踏み込んでアピールしているんですね。

家田

そうなんです。こうした専門的な話ほど、作る側が十分に理解していないと噛み砕いて分かりやすい説明にすることができないので、企画や脚本の段階で事業会社さまと綿密なコミュニケーションが必要です。そこにとても時間がかかるんですね。こういった案件を通じて弊社のクリエイターが金融について詳しくなったこともあって、金融系の案件は度々ご相談をいただいています。

WIT

確かに、難しいことを極力シンプルに説明しながらキャラクターのセリフに乗せたり、ギャグやオチに持っていくのは、作り手が本当に理解していないとできませんね。

家田

はい。折り込める情報量にも限度がありますから、削って削って本当に大事な部分を残していくためにも重要なポイントです。

WIT

先ほどメリットとして挙がっていた「表現力」の「分かりにくいことを分かりやすく」という点は、アニメというアウトプットの形ではなく、作り手の理解度が生み出しているんですね。

「人から人へ」の言いにくさを代弁
家田

次に、JR西日本様の「さわやかマナーキャンペーン」の事例です。こちらも「秘密結社 鷹の爪」を起用したもので、キャンペーン動画の制作、ポスターやサイネージでの訴求、また「鷹の爪団」のキャラクター レオナルド博士(熊)の着ぐるみで子どもたちと触れ合うイベントなどを実施しました。
マナー啓発のポスターは交通機関でよく見かけますが、表現方法については利用者に不快感を与えないよう注意しなくてはなりません。内容によってはクレームが増えてしまう場合もあると聞いていますしかしこの事例では特にクレームが増えたとということもなく、むしろマナー啓発に対して好感度が上がったとのことで、2年に渡り実施しました。

WIT

普通に考えて分かりきっていることを誰かに言われると、ちょっと反感を持ってしまう気持ちはわかります。でもそれがキャラクターならワンクッション置いて受け止められますね。

家田

それが「言いにくいことを言いやすく」というポイントにつながります。例えば、弊社内用に執務室内でマスク着用をお願いするポスターを制作しましたが、文字や写真ではなく、吉田くんのウルウルした目や、ダジャレで訴えています。他にも、マナー系ではTOHOシネマズの鑑賞マナー映像でも使っていただきました。

WIT

見たことあります。通常は見なきゃならない映像を、コンテンツとして楽しめるのがいいところですね。

キャラクターは使われてこそ
家田

最後に、オリジナルキャラクターの例です。みずほフィナンシャルグループ様のご依頼で作成した「あおまる」というキャラクターで、動画やマンガのコンテンツ、SNS、LINEスタンプなどに活用されています。オリジナルキャラクターは、幅広く、長期間使っていただくことで、ブランド資産の構築にもつながると考えています。

©2021 Mizuho Financial Group, Inc.
WIT

大手企業のブランドリフト施策というと、タレントを起用するケースをよく見かけますが…

家田

そうですね。例えばタレントと一緒にキャラクターを併用して使い続けることで、タレントがワンクールごとに代替わりしてもキャラクターの方にブランド認知が蓄積されていく効果が期待できます。

WIT

なるほど、CIのような位置付けなんですね。何か新しいクリエイティブにキャラクターを使う場合は、事業会社さまから制作を依頼されるのですか?

家田

動画などはそうですが、基本的には使用ガイドラインやポーズ集をお渡しして、パンフレットや掲示物などに手軽にお使いいただける形にしています。使うのに手間がかかると結局使われなくなってしまうんですね。一緒にキャラクターを開発した部署の担当者さまはもちろんキャラクターに愛着を持っていただいていますが、それ以外の部署の方にもいかに使いたいと思ってもらえるかがポイントです。キャラクターは使われてこそ意義があります。

WIT

より多くの社員に使ってもらうためのコツはあるのでしょうか?

家田

はい。やはりポーズ集だけ見ても、このキャラがどんな性格や話し方、人物像を知らないと、どう使うかのイメージが持てません。なので、私たちはアニメの会社でもあるので、世界観や喋り方、仲間のキャラクターなどを含めて、社外はもちろんのこと、社内の方に世界観を知ってもらうためのマニュアル的な位置づけとしても動画を作成することをお勧めしています。

日常的に目にするキャラクターコラボのプロモーションや、オリジナルキャラクターを配置した広告。その裏側にどんなメッセージや世界観があるのか想像すると、マーケティングの狙いが見えてくるかもしれません。次回は現在のキャラクターマーケティングに欠かせないSNSの事例をお聞きします。

家田 玲衣奈(イエダ レイナ)さん
大学時にIT企業のインターンにて、SNSマーケティングの経験を経て株式会社ディー・エル・イー入社。自社ブランドキャラクターのSNSやYouTubeチャンネル運営、ウェビナー企画など、BtoBおよびBtoC向けの広報・マーケティングを担当。メディア等への取材対応や記事執筆も行う。