オンライン時代のキャラクターとマーケティング

第1回 コロナ禍でも平常運転、キャラクターの強さ

的確な手段と作法で伝えられたメッセージには、人のアクションを促す力があります。2020年のコロナ禍は、私たちにそれをより強く意識させることになりました。Webサイトや広告、オウンドメディアなど、オンラインを活用したコミュニケーションが改めて課題となる中、メッセージの伝達に「キャラクター」という装置を用いることの強みに、改めて注目してみたいと思います。
「秘密結社 鷹の爪」「耐え子の日常」など、キャラクターを活用したマーケティング、プロモーション事業を行なっている株式会社ディー・エル・イーで、広報や自社キャラクターのSNS運用を担当する家田さんにお話を聞きました。

人の動きが制限される中でも、キャラクターは自由
WIT

広告やマーケティングにキャラクターを起用することは昔からよく行われてきましたが、最近の傾向として何か特徴的な点はありますでしょうか?

家田

そうですね、マーケティング全般に言えることですが、SNSを主軸にメッセージを発信したり、オンライン・オフラインの連携が多様化する流れが見られます。また、企業だけでなく政府や自治体でも広報にキャラクターを活用する事例が増えていますよね。やはり、キャラクターを起用することによる広告効果の高さや、コスト、スピードが評価されているのだと思います。

WIT

コロナ禍でいろいろな業界が影響を受けていますが、マーケティングには何か変化は起きていますか?

家田

広告やプロモーションの分野でいえば、タレントを起用したイベントの実施が難しくなっています。その影響で、昨年は巣ごもり消費を踏まえてWebに振り切った施策のご依頼をいただくケースがありました。ドラマやCMなどの実写撮影では、現場が止まったり拘束時間が長くなったりして制作費が上がっているそうですが、キャラクターならその心配はありませんし、スタッフも「密」にならずに制作を進めることができます。

WIT

なるほど、キャラクターならどこへでも行けますね。DLEさんは、現在はリモートワークで制作を?

家田

はい。基本的にはリモートで、必要な場合に限り一部出社しています。もともと弊社の場合は作品ごとに2〜3人の少人数チームで制作を行なっており、リモートでも滞りなく進められています。コロナ禍の中でも、ご依頼にはフレキシブルに対応することができました。

世界観や人物像も含めてプロデュース
WIT

経験的に、自分が知っているキャラクターの広告やコラボ商品にはつい目が行くものですが、プロモーションする側から見てキャラクターを起用する利点はどんな部分にあるとお考えですか?

家田

そうですね、大きく3つのメリットがあると思っています。1つは、時間の制約や病気・加齢といったリスクを受けずに「柔軟性」ある展開ができることです。例えば「秘密結社 鷹の爪」の吉田くんはゴスロリになったり動物になったりできますし、10年経っても同じ姿で新しいコンテンツに登場させることも可能です。
2つ目は、実写とは異なる形で発揮される「表現力」です。弊社ではこれを「分かりにくいことを分かりやすく」「言いにくいことを言いやすく」という2つの軸で解釈しています。この点についてはこの後の事例で詳しくお話ししたいと思います。
3つ目は、企業や商品のイメージ醸成に効果的な「継続性」です。オリジナルキャラクターならタレントのように契約期間に縛られず使い続けることができ、常にそこに存在することでブランドのアイデンティティをキャタクターに蓄積させることができます。こちらも後ほど事例でご紹介します。

WIT

オリジナルのキャラクターを開発するケースもあるんですね。

家田

はい。弊社にご相談をいただく案件の半分くらいはクライアントのオリジナルキャラクターです。ブランドキャラクターはタレントと同じ扱いなので契約期間が生じますが、オリジナルなら継続的に活用していただけます。5年以上続いている例もありますね。

WIT

オリジナルがそんなに多いのは意外でした。

家田

もともとあるキャラクターのリプロデュースを相談させていただくケースもあります。自治体などが観光や物産PRなどを目的に作ったものの、活用の仕方がわからず埋もれていることが結構あるんです。

WIT

それ、気になっていました。「ゆるキャラグランプリ」に何百人(?)も出場していますけど、本当に活躍できているキャラがどれくらいいるのかと…

家田

そうなんです。PRキャラクターなら本来何かを伝えなくてはなりません。そうすると、どうしても話をする必要がありますが、そこまでイメージできているキャラクターはあまりありませんよね。実際に活用しようとすると、どんな世界に住んでいて、どんな話し方をするのか、何を考えているのか、そういう人物像をイメージできないと難しいんです。

WIT

確かに、しゃべるキャラは少ないですね。

家田

はい。そういったキャラクター性まで含めてプロデュースされているかどうかどうかが、キャラクターを使ったプロモーションが成功するか否かのポイントだと思っています。

マーケティングやプロモーションにキャラクターを活用することには、単に親しみやすいということ以上に、いろいろな利点があるようです。しかし、単にキャラクターがいれば成功するというわけではありません。次回は、これまでの事例から効果的なキャラクター起用のポイントをお聞きします。

家田 玲衣奈(イエダ レイナ)さん
大学時にIT企業のインターンにて、SNSマーケティングの経験を経て株式会社ディー・エル・イー入社。自社ブランドキャラクターのSNSやYouTubeチャンネル運営、ウェビナー企画など、BtoBおよびBtoC向けの広報・マーケティングを担当。メディア等への取材対応や記事執筆も行う。