これから始めるコンテンツマーケティングの狙い方

第2回 買う前に迷う商材はオウンドメディア向き

企業が選ぶマーケティング施策の中で、オウンドメディアは今もなお大きな選択肢のひとつ。では、オウンドメディアの成功と失敗はどのように分かれるのでしょうか? コンテンツマーケティングに詳しい株式会社イノーバのCEO宗像淳さんに、オウンドメディアが効果を発揮する業態や、SNSとの関連性を伺った。

検討の時間や情報量が多いものがオウンドメディアに向いている
栃尾

メディアビジネスはもう成り立たないという話がありましたが、マネタイズという観点とは別に、オウンドメディアは相変わらずリーチという観点では選択肢のひとつになり得ます。メリットとデメリットを教えていただけますか。

宗像

自社でコントロールできる集客メディアがあるのはメリットです。お客様との接点になりますから。ある程度しっかりしたキーワードを選び、ちゃんとしたライターさんや制作会社に頼めば質を担保できます。

栃尾

デメリットはどんなところでしょうか?

宗像

商材によっては、オウンドメディアが全く効果をなさないものがあるんです。インターネットでの検索やSNSシェアからの流入は、マーケットボリュームが決まってしまっていると考えています。

栃尾

確かに。そこの奪い合いということですね。

宗像

上手に運営できればいいのですが、上手くできないと効果が出ません。ユーザーを定着させ、リピートしてもらえるメディアにするのは難しいんです。ひと昔前と違って、いまはブックマークして訪れてくれる人はほぼいませんから。

栃尾

昔は、お気に入りサイトをブックマークしていましたけど、今はSNSで大量に情報が流れてくるから……という感じですよね。では、オウンドメディアが効果的な商材はどのようなものなんですか?

宗像

最近は特に、「検索で情報を集め、よく検討して買うもの」じゃないと難しいですね。わかりやすい例では、自動車や住宅、保険商品など。コンビニのスイーツやお茶を検索して探してから買うことはまずないですよね。

栃尾

確かにそうですね。

宗像

金額が高くて、検討度合いが高いものならオウンドメディアに向いています。先ほど挙げたようないわゆる高額商品の他にも、大学選びとか、転職の検討などもしっかりと比較検討が必要で、人生で重要な選択になるので向いていますね。

外部リンクのある投稿はもはやバズらない
栃尾

検討する時間が長く、そのための情報量が多いものがいいんですね。ライトなものはオウンドメディアでない別のコンテンツが有効ということですか?

宗像

そうですね。ドリンクやスイーツの場合、InstagramやFacebookに代表されるSNSのユーザーが普段タッチしている文脈に、伝えたい情報を差し込んでいく必要があります。非耐久消費財の場合は、TwitterやFacebookといった分散型メディアでのアプローチを考えなくてはいけません。

栃尾

分散型メディア。オウンドメディアに連れて来るのではなく、SNS上にコンテンツを載せるということですね。

宗像

SNSのアルゴリズムは調べることができます。TwitterもFacebookも、外部のサイトにリンクが張られていると表示率が落ちるんですね。つまり、インプレッションが減る分、クリックやLIKEのエンゲージ数も明確に落ちます。

栃尾

そうなんですか! ただ、バズる記事もありますよね?

宗像

それは過去の話ですね。アルゴリズムが変わったので、実は記事をシェアしてバズることはあまりないです。

栃尾

そう言われてみれば最近、外部リンクされている記事がバズったのを見ていない気がします。

ホワイトペーパーを活用している理由は?
栃尾

イノーバさんの提供されるオウンドメディア施策では、ホワイトペーパーをかなり積極的にお勧めされている印象を受けます。

宗像

そうです。ホワイトペーパーは非常にお勧めです。マーケティングでは、リード育成という考え方があります。

栃尾

はい。見込み客を優良顧客に育てていくプロセスですよね。

宗像

そのためには、コンテンツのラインナップを広げて、定期的にステップ型のメールを配信するといった手法があります。その導入過程で、ホワイトペーパーはすごくいいんですよ。

栃尾

ある程度まとまった内容をPDFなどにして、ダウンロードしてもらうんですよね。そこで顧客情報を取得すると。

宗像

はい。一番のメリットは、興味の度合いがわかることです。

栃尾

なるほど、「これをダウンロードしたということは……」とわかるんですね。

宗像

例えば、オフィス家具を販売している会社なら、オフィスが移転したり内装を見直したりするタイミングが知りたいですよね。でも、顧客リストをテレアポなどですべてあたって1件1件の状況を聞きまくるわけにはなかなかいきません。そんな時、オフィス移転に役立つホワイトペーパーをサイトに掲載しておけば、お客様のほうからアクセスしてくれて状況を教えてくれるんです。

栃尾

おお……! 確かに!

宗像

展示会などで名刺を大量に獲得しても、定期的にフォローしていないケースが多く、購入検討のタイミングを逸したり、そもそも顧客リストの存在が忘れられていることも多々見受けられます。ホワイトペーパーなら、ダウンロードしてくれたタイミングがまさに検討中なので、いきなりアプローチをかけても案件に発展する確度は高いといえますね。

オウンドメディアに向いた商材や、SNS、ホワイトペーパーの活用法などを頭に入れてオウンドメディアを運用していきたいところ。次回は、実際に始める場合に気を付けるポイントを伺っていく。

宗像淳さん
株式会社イノーバ代表取締役社長CEO。
福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA。1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業立ち上げ、ネクスパス(現トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当。2011年6月に株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。https://innova-jp.com/

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも