自社でオウンドメディアを始める場合、どこからスタートして、どのように運用していけばいいのだろうか。コンテンツマーケティングを事業の柱として、さらに自社でもオウンドメディアを活用している株式会社イノーバの宗像進さんに、スタートする際のポイントを伺った。
自社でのコンテンツ作りでオウンドメディアを選ぶ理由は
これまでもお伺いしてきましたが、コンテンツマーケティングの手法は多様になっているんですね。
SEOに自信があるなら、オウンドメディアはよい選択だと思います。YouTubeやnoteは、似たようなキーワードで動画や記事がたくさんあった場合にGoogle検索で同じプラットフォーム内の記事に負けてしまい、検索結果に表示されないことが考えられます。一方で、YouTubeやnoteのプラットフォーム内のおすすめに表示され、リピーターを作りやすいというメリットもあります。
どちらがいいか、悩ましいですね。
ガチでやるなら、基本的には全部やらなくてはなりません。1コンテンツマルチユースですね。ひとつのアイデアやコンテンツを複数のメディアに展開します。例えば、YouTubeにアップする動画のダイジェスト版や制作現場のオフショットバージョンを作ってSNSに投稿するといったことですね。
noteのお話が出ましたが、最近はオウンドメディアにするかnoteにするか、という選択肢があるように思います。
すぐに書き始めることが目的ならnoteでしょうか。スピード感があり、短期的に反応を得やすいです。SEOによる流入を期待するならオウンドメディアですね。下手すると誰にも見られない状況になることもありますが、長く続ければ効果が出てきます。
長く、というのはどれくらいが目安ですか?
目安としては1年くらいでしょうか。ただ最近は、Googleのアルゴリズムが変わったので、SEO的にいい記事を書いていれば、1か月くらいで検索結果に表示されるようになってきました。
Google検索による流入はどうやって集めるか?
戦略的に進めるにはやはりSEOが大切なんですね。具体的にはどのように進めていくものなのでしょうか。
最低限はキーワード分析をして、その上でテーマや内容を考えた方がいいですね。できれば専門のSEOツールを入れて、キーワードの分析や順位の確認も頻度を高くした方がいいでしょう。
キーワードが大事なんですね。内容はいかがですか。
Googleは記事の中身を見ているので、内容は大事。特に、網羅性が高い方が有利です。Googleの方針として、ユーザーが調べたい検索ワードに対して、答えに近いより有益な情報を返したいと考えています。ですから、ある分野の専門用語を適切に使っていたりすると「この記事は詳しそうだ」と判断します。つまり、記事として適切な深さや幅の広さを持っているかが、検索上位に表示されるかどうかの判断基準となります。
検索するユーザーのニーズを満たすようになっているんですね。
はい。わかりやすい例ではWikipediaは上に出てきますよね。幅も広いし深さもある。ニッチで専門的で、Wikipediaのように網羅されていれば上位に上がってきやすいんです。ドメインも強いですがそれだけでなく、ひとつのページ内で、そのキーワードに関連する情報が何でもかんでも出てくるのが強い。
なるほど。ページ内に掲載されているワードがやはり重要なんですね。
面白いものを書けば順位が上がるわけではないんです。人間の場合は「なるほど!」「たしかにそうかも!」という気づきによって満足感を得ることは多いですよね。面白いコンテンツってそういうもの。でもGoogleのアルゴリズムではまだそこまで情緒的な判別はできないので、人がいいと思うものと、検索順位の上位になるものでギャップがあるんです。
少し前まで「SEO的には1ページあたりの文字量は何文字以上!」なんて言われていましたが、今はどうなのでしょうか?
キーワードによって異なります。当然ですが順位は相対評価なので、他のサイトと比較して判断します。文字が多くていい記事なら、その方がもちろん優位ですが、基本的には、3000~3500字くらいを目安にするといいのではないでしょうか。
やはりある程度のボリュームがあった方が有利なんですね。
例えば、600字ほどの記事が大量にあるよりは、長めにまとまっているほうがいいです。最近、Yahoo!知恵袋のようなQAサイトが上位に表示されなくなっていると思いませんか?
本当ですね! そういえば!
短いし、網羅性がないので、Googleのアルゴリズムが変わってから順位が一気に落ちてしまいました。
なるほど。ところで、SEOに強い記事ばかりを集めた方がいいのでしょうか?
その質問はとてもいい視点だと思います。実は、多くのメディアで、アクセスされているのは全記事の10%くらいなんです。少ない印象を持たれるかもしれませんが、これが現実なんです。つまり残りの90%の記事は、読まれていないという意味において要らなかったかもしれません。でも、お客様の役に立つという意味ではいい記事かもしれません。
確かにそうですね。知りたい情報や見たいコンテンツは、その人の趣向性やタイミングによって変わるものですから。
中身がいいのに読まれない記事はもったいないので、メールでPUSH的に配信してみたり、SNSでシェアしたり、サイト内のレコメンド記事としてお勧めしてみたりと、人の目に触れるチャンスを作ってあげた方がいいですね。
SEO対策をするなら、オウンドメディアはメリットが高く、そうでないならnoteなどのプラットフォームサービスが有効だという。また、SEOでの流入が少ない記事も、工夫次第でユーザーのために活用できる。次回は、これからのコンテンツマーケティングで注目すべき分野を聞いていく。
宗像淳さん
株式会社イノーバ代表取締役社長CEO。
福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA。1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業立ち上げ、ネクスパス(現トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当。2011年6月に株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。https://innova-jp.com/
栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも