コンテンツマーケティングがカバーする領域は広く、これからもカタチを変化させながら発展し続ける。では、少し先を見据えて、いま注目すべきポイントはどこなのか。コンテンツマーケティングに詳しい株式会社イノーバのCEO宗像淳さんに伺った。
マイクロメディア×細分化されたコンテンツの掛け算発想
コンテンツマーケティングで、これから注目すべきなのはどんな分野でしょうか?
全ての基本となるのはカスタマーエクスペリエンスです。スマホが当たり前になり、Uber Eatsを頼むと「地図上でバイクが動く。来た、来た!」と楽しいですよね。そういうことが当たり前になっています。こういう体験も一つのコンテンツといえます。
体験として面白いですもんね。
僕たちが考えている以上に、ユーザーが求める期待値が上がっているし、受け取り手としては気づかないうちにコンテンツに触れているんです。
作る方は大変ですね……。
メディアやコンテンツはどんどん細分化しています。マイクロメディア化の波はどんどん加速していくでしょう。
マイクロメディアと細分化されたコンテンツはどのように組み合わせるといいのでしょうか。
FacebookやTwitterには写真や短い動画が向いています。ただ、注意していただきたいのは、SNSにYouTubeのリンクを張るとエンゲージメントが落ちるので、SNS内に直接動画をアップした方がいいですね。
では、YouTubeで動画を配信しても、SNSにリンクしないほうがいいんですか?
そこは難しいところですね。両方混ぜる必要があります。投稿自体のエンゲージメントはほかのものより下がりますが、そうだとしても、SNSからの流入はやはり効果的なのでゼロにするのは得策ではないですね。
BtoBマーケティングはコロナの影響で追い風に
LinkedInは日本ではイマイチですが、あの手の居心地のいいビジネス系のSNSはあってもいいかなと思いますね。TwitterやFacebookでビジネスの話はなかなかしにくいけど、LinkedInならみんながビジネスクラスタなので全く問題ありません。
確かにあまりないかもしれません。NewsPicksは近いでしょうか。
そうですね、近いと思います。人と人の偶然の出会いができるような場があるといいですよね。でも、「そこに行くと楽しい」を作って育てていくのがとても難しいんですよね。
イノーバさんとして狙っている分野はありますか?
BtoBマーケティングはこれまでもやってきましたが、コロナの影響で世の中的に「展示会」「対面営業」から脱しなくてはいけないという雰囲気になりつつあります。
これまで人海戦術でやってきた企業が、シフトしなくてはいけない時期ですね。
コンテンツというとSEOやメディアばかりが取りざたされがちですが、YouTubeやウェビナーといった、企業がいま着手したほうがいい分野は多岐にわたります。そういった派生的なコンテンツ領域まで包括的に支援できる会社として、サービス体制をもっと研ぎ澄ませていきたいと考えています。
セミナーではより具体的なコンテンツが人気
イノーバさんでは独自のCMSシステム「CloudCMO」を提供されていますが、どんなことに効果的なのですか?
わかりやすくいうとWordPressやMovableTypeの更新簡易性機能にマーケティング的要素を拡張したようなものです。CMSにアクセス解析やマーケティングオートメーション、顧客解析、メール配信といった機能を搭載しています。
よく使う機能をワンパッケージにしているんですね。ほかに、セミナーなども多く開催されていますよね。最近人気のコンテンツの傾向はあるのですか?
定番は、対面で営業できないなかで、オンラインでお客様と接点を持つためのセミナーが人気ですね。また、抽象度の高い概論よりも、具体的なHOW TOを求めている方が多くなっていると感じます。
きっと、いますぐに手を打ちたい、というニーズなのですね。
そうですね。サイト改修やホワイトペーパーの使い方、といった内容が人気です。
最近はウェビナーですよね。リアルなセミナーとどう違いますか?
足を運ばなくていいので、参加者が集まりやすく集客が容易です。また、Zoomによるウェビナーだとチャットで質問できるので気軽に質問できるだけではなく、随時質問を受け付けて、その場で講義の中でリアルタイムに回答するような運営方法もしやすいみたいです。
会えない弊害があるにしても、良い面もたくさんあるんですね。
これからは、BtoBとマイクロメディアにますます注目が集まりそうだ。時代の流れやプラットフォームの特徴を踏まえて、効果的にコンテンツを制作し、届けていきたいもの。イベントは減ったものの、ウェビナーなど新しい可能性も広がっている。うまく活用していけるといいだろう。
宗像淳さん
株式会社イノーバ代表取締役社長CEO。
福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA。1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業立ち上げ、ネクスパス(現トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当。2011年6月に株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。https://innova-jp.com/
栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも