これから始めるコンテンツマーケティングの狙い方

第1回 コンテンツマーケティング最新事情

「コンテンツマーケティング」という考え方が浸透して、どの企業も自社でコンテンツを作るようになってきて久しい。当然ながら「ただ作ればいい」というものではなく、効果的に取り組んでいきたいもの。コンテンツマーケティングに長年取り組んでいる株式会社イノーバのCEO宗像淳さんに、最新事情を伺っていく。

広告的でないもの全般が「コンテンツマーケティング」の領域
栃尾

イノーバさんはコンテンツマーケティングに注力して事業をなさっていますが、改めて、「コンテンツマーケティング」とはどんなことを指すのですか?

宗像

確かに、明確な定義や共通見解があるわけではありませんが、ひとつは「広告的でないもの」「売り込みでないもの」として定義づけられていると考えています。たとえば、テレビCMでも面白くて見てしまうもの、商品が登場する番組なども広義においてはコンテンツマーケティングのひとつとして捉えられる場合もあります。

栃尾

コンテンツと言うとWebメディアや映像などが思い浮かびますが、他にはどのようなものがあるのでしょうか。

宗像

読みものやYouTube動画はもちろんのこと、SNSもそうです。また、例えばエナジードリンクのブランドがエクストリームスポーツのイベントをスポンサードする場合など、スポーツやイベント自体がコンテンツになります。ユーザーに届けるため、ユーザーが喜んで体験できるものを提供している場合は「コンテンツ」と捉えてもいいと思います。

栃尾

最近の傾向として特徴的なものはありますか?

宗像

Before SNSとAfter SNSでは考え方が明確に異なります。Facebookがアメリカで爆発的に流行したとき、ペプシやコカ・コーラなどが、マス広告をやめてFacebookにシフトしましたよね。いったんマス広告への揺り戻しもありましたが、いずれにしても、SNS時代にはユーザーが能動的にコンテンツの配信主になったり、深く日常に根付いたコンテンツとして楽しむための場が広がってきています。

これからは映像と音声、noteなどに注目
栃尾

いま世の中的に注目されているコンテンツ領域はありますか?

宗像

以前からそうですが、最近特に増えているのは動画でしょうか。あと、音声は世界的に注目されていますね。ポッドキャストやASMRなど。動画なら、YouTubeとTikTokですが、TikTokは楽曲などの音声の力で流行っている部分も多いですね。

栃尾

ああ、わかります。頭に残るというか。

宗像

そうそう。繰り返し連呼されると染みついてしまって、寝る前にまた見ちゃう、という循環でしょうね。音声はラジオメディアもたくさん出ていますが、映像と音声はより強くなっていると感じますね。

栃尾

確かにそうですね、目にする回数が増えました。

宗像

あとは、BtoBではZoomによるウェビナーも増えています。

栃尾

本当に、最近すごく増えましたね。動画は以前と違い、撮影のための機材も高機能のものが安く手に入りやすくなりました。

宗像

テキスト系プラットフォームでは、最近noteに注目しています。有料記事が作れるブログのようなサービスとしては、海外では以前からあるMediumにコンセプトが似ています。SNSのLinkedInでブログを書いている人もいます。ただ、ビジネス系のブログに特化したプラットフォームがまだないので、これから出てくるかもしれません。

栃尾

宗像さんが個人的に注目している分野はありますか?

宗像

海外のスーパーブロガー、スーパーポッドキャスターといった人には注目しています。個人で活動している人たちですが、コンテンツ力がすさまじい。マスコミやテレビにも出ているので、ネットメディアとマスメディアの境目がなくなっていると感じます。

コンテンツ作りは難しくて簡単
栃尾

コンテンツマーケティングには、当然ながら「コンテンツ」が必要なわけですが、ここはAIなどでもなかなか自動化できないんじゃないかと感じています。難しさはどのへんでしょうか。

宗像

基本的には、「消費者のために作る」と「ビジネスにつながる」が相反していることが難しいところですね。

栃尾

確かに、ジレンマがありますね。

宗像

例えば、以前大流行りしたネットメディアのビジネスモデルは破綻したと思っています。DSPといったバナー広告の自動配信枠の販売などではマネタイズができなくなっています。各メディアも枠を提供するだけでなく、自ら営業をして広告を取って行かないと立ち行かないんです。

栃尾

メディアだけで売り上げようと考えるのは難しいんですね。

宗像

一方で、BtoBは比較的狙いやすいです。独自の専門性が出せるので、集客して顧客を育てていけばプロダクトの売上につながりやすい。

栃尾

それはイメージが湧きますね。コンテンツ作りのコツをひとことで言うとどんなところですか?

宗像

基本的には、消費者が「読んでよかった」と思うものを作り続けること。それをひたすら続けていけば、どんどんコンテンツの求心レベルが上がります。1年目よりは3年目の方が断然よくなる。そういう意味で、コンテンツ作りは見方によって難しいとも、簡単とも言えると思っています。

1回目はコンテンツマーケティングの概要について聞いたが、2回目はオウンドメディアに絞って聞いていく。上手くいくケースと、上手くいかないケースの例などを教えていただく。

宗像淳さん
株式会社イノーバ代表取締役社長CEO。
福島県立安積高校、東京大学文学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートン校MBA。1998年に富士通に入社、北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等の広汎な業務を経験。MBA留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから転職し、楽天で物流事業立ち上げ、ネクスパス(現トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当。2011年6月に株式会社イノーバを設立、代表取締役に就任。https://innova-jp.com/

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも