健診に新たなマーケティング思考で挑戦

第4回 ヘルスケアのアプリと連携すれば見込み客の囲い込みも

個室で人間ドックや健診が受けられるという「カラダテラス海老名」。その健診用施設を立ち上げたのは、社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス(JMA)だ。医師や看護師が受診者の個室を回るという、医療業界では画期的なこのシステムをどう形にして、どう広めていくのか、カラダテラス海老名 管理部 部長の小松英之さんに伺う。第4回目は、今後展開していきたい施策や、方向性を聞いた。

必需品ではないから難しい

栃尾:
個室の健診は新しくてコンセプチュアルですが、「健診」というサービスならではの難しさはありますか?

小松:
必需品でなく、日常的でもない。病気になって初めてその大切さがわかるから、なかなか新しいものでも飛びつかないでしょうね。どうしても、後回しになってしまいます。特に50代の方が多いので、より「これまで通りでいい」となる。

やり方としては、普通自動車免許の更新の際に見る事故の映像のように、ストレートに恐怖心をあおる方法もあります。でも、それはあまり長続きしないし、やりたくないと思っています。

がん保険のテレビCMなども、やわらかくリスクに対する危機感をあおりながらも、「入ってよかった」という優しいイメージや、コミカルなイメージで伝え続けていますよね。

実際には、「同い年の友だちが倒れたから自分も」というように、身近なところで何かが起こらないと「自分ごと化」できないんじゃないでしょうか。広告でそれをやるのはなかなか難しい。

ヘルスケアアプリとの連携には可能性がありそう

栃尾:
最近は「健康を気にするのがかっこいい」という風潮があるように思いますが……。

小松:
ヘルスケアアプリなど、若い人の間でカジュアルに始めるのが話題にはなっていると思います。でも、それらはあまり長続きしないんです。ポイントがたまったりしますが、結局悪くなったら病院へ行くしかない。

病院とアプリがつながっていないので、病院へ行き始めると、ヘルスケアアプリのデータと切れてしまう。運動のコンサルテーションはできるかもしれませんが、栄養相談や医師の処方する薬などとは無関係になりがちです。ヘルスケアアプリは医師が関わっていないので、医療行為ができないんですね。

ただ、我々のような医療法人であれば、医療行為ができます。ヘルスケアアプリと手を組めば、顧客の「健康サークル」ができて回遊ができるので、お互いにメリットがあると思います。

ヘルスケアに興味はあっても、人間ドックには行かない、というタイプの方を潜在的ニーズ顧客と位置づけ、必要になったときにすぐにつながることができるようにしておく。さらに、悪いところがあれば病院の予約も取れる、そういった世界が実現できれば、いいサービスが自然と広まっていくのではないでしょうか。

医療機関とトレーナーが連携すれば橋渡しになる

栃尾:
病院で出してもらえる薬と、普段の健康管理が連携されていたら、使う方にも大きなメリットがありますよね。

小松:
餅は餅屋なので、医師が薬を処方して、例えばより身近に居るスポーツジムのトレーナーが、日常の健康維持プログラムを組むといった連携ができれば、可能性が広がりそうです。それにより、お互いが見込み客を得られますよね。

そのようなチャレンジは、医療法人が主導で進めていくべきなのかもしれません。将来的には、無関心な方が関心を持ち始め、未然に病を防ぐために気軽に健康診断を受けることができる……。そんな橋渡しがスムーズにできればいいと思っております。

小松英之
社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス経営企画本部事業開発推進部。
経営企画、新事業開発の他広報活動にも携わる。

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも