健診に新たなマーケティング思考で挑戦

第3回 強みは顧客満足度。伝えるには時間がかかる

個室で人間ドックや健診が受けられるという「カラダテラス海老名」。その健診用施設を立ち上げたのは、社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス(JMA)だ。医師や看護師が受診者の個室を回るという、医療業界では画期的なこのシステムをどう形にして、どう広めていくのか、カラダテラス海老名 管理部 部長の小松英之さんに伺う。第3回目は、強い商品力を伝え、広めるための試行錯誤の様子を聞かせていただいた。

業界の常識は一般の非常識

栃尾:
人間ドックが個室で、さらに短時間で終わるのは、代えがたい魅力だと思います。

小松:

医療業界は、一般的に見たら非常識なことであふれています。例えば、月曜日の病院はどこも行列ができていて、待合室で1時間待っていただくのも仕方ないと思ってしまう。そうするとそこからは改善策が生まれにくくなってしまいます。

人間ドックも同じで、待ち時間がとても長い。そこに疑問を持ち、改善しようとしたところが一番のポイントでしょうね。従来は4~5時間かかったものを、「カラダテラス海老名」なら1時間半で終わります。実現するためには、ほかの業界を参考にしました。美容院やエステなどを参考にして、細かく予約が取れるようにしたんです。健診業界ではあまり前例が無いので、他の業界のノウハウを調べて活用しています。

土地柄を考えて、セレブリティはターゲットから外した

栃尾:
ターゲットは高級志向の方ですか……?

小松:
セレブリティな方をターゲットにするという案もありました。ただ、海老名地区を調べると、世帯年収が2000万円以上の世帯はとても少ない。また、都心に住む年収の高い方が、人間ドックのために海老名まで来るとは考えにくく、高所得層を狙うのはやめようと判断しました。値段は従来と同じまま、個室で、かつ短い時間で受けられるので、「顧客満足度」は非常に強いと考えています。

栃尾:
どのように認知してもらおうとお考えですか?

小松:

4月にオープンして、今は1日100人くらいに受診していただいていますが、まだまだだと思っています。やはりいらしてくださるのは地域の方だと思っているので、地元のフリーペーパーに記事​を書いていただいたり、海老名市長に来ていただいたり、病院のサイネージに広告を出したりと、地域ですこしずつ広めようとしています。大きく広告費を使えるわけではないので、地道に進めているという形です。

高い顧客満足度は、時間がかかるが口コミに期待

栃尾:
年齢層や、男女比はどのようになっているのですか?

小松:
50代くらいの高齢の方が多く、男女比は半々です。やはり、若い方は健康を気にしないのが実情です。ちょっと気になっていても、どこに行っていいかわからない人も多い。同じ値段でもサービス内容は優れているはずなので、例えば著名な方がSNSなどで「よかった」と言ってくれれば、一気に広まるかなと。

栃尾:
健診内容は選べるのでしょうか。

小松:
胃カメラが怖いという人もいるので、そこは相談に乗れます。胃カメラとバリウムは選べますし、採血だけでもある程度分かるので、それを選んでいただいてもかまいません。

のちのちは健康相談にも乗れるようにして、コンサルテーションもしようと思っています。そういうところでの差別化も考えています。

小松英之
社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス経営企画本部事業開発推進部。
経営企画、新事業開発の他広報活動にも携わる。

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも