YouTubeはアナリティクスで劇変する 第1回「有名人を使っても見られない」――企業YouTubeの進む道 2020-04-15 達人の伝わる広まる PR YouTube アルゴリズム 伝わる・広まるインタビュー 動画SEO 最強の教科書 配信プラットフォームとしてのYouTubeが最近特に注目されている中、『広報PR・マーケッターのためのYouTube動画SEO 最強の教科書』を上梓した、株式会社動画屋代表取締役の木村健人さん。今回から4回にわたり、企業が運用するYouTubeのコツを伺っていく。まずは、木村さんの実績や「企業がYouTubeをすべき理由」などを聞いた。 動画や口コミの市場調査を中心に動画制作事業へ 栃尾 ご著書の『広報PR・マーケッターのためのYouTube動画SEO 最強の教科書』は、YouTube配信のコツがこれでもか、と詰まっていますね。普段はどのようなお仕事をなさっているのですか? 木村 YouTubeの運用全般ですね。クライアントさんの要望に合わせて、YouTubeに特化した動画の制作や、市場調査をしています。 栃尾 市場調査というのは……? 木村 例えば、お客様がシャンプーのメーカーさんだったら、他メーカーや美容師さん、インフルエンサーさんがアップしている動画の傾向、視聴回数の多い動画の傾向、といったものを調べていきます。そのうえで、YouTube動画の企画や制作をするんです。 栃尾 YouTubeの動画回り全般、ということですね。 木村 それと、業務としてはテキストの分析もしています。企業さんは口コミをとても大事にしますが、その活用方法ってあいまいなんです。実はしっかり分析できていなかったりする。そこで、テキストマイニングをして、頻出単語を抽出したり、クラスタ単位で分析したりと、口コミから見える傾向を調べます。ワード単位のメンション量を調べて、クライアントさんのビジネスにとって最適なキラーワードをご提案していきます。 栃尾 なるほど、口コミを印象だけでなくしっかりしたデータとして活用するということですね。 木村 そうです。楽天やAmazonのサイトをスクレイピング(Webページから必要な情報を取得する手法)して、分析していきます。 「作るだけでは見られない」YouTubeの実情 栃尾 YouTubeはずいぶん前から注目されていると思うのですが、最近は特に「始めたい」と言っている企業も多いと感じます。YouTubeの文化や流行はどのような流れで進んできたのでしょうか? 木村 まず、YouTubeの動画広告は2012年ごろから活用が叫ばれていました。動画本編が始まる前に数秒の宣伝動画が流れる、テレビのCMのような手法ですね。その一方で、企業が自分たちで制作した動画をYouTubeに配信しても、なかなか思うようには成果が上がらなかった。そういう流れが2018年くらいまで続いたのではないでしょうか。それから、インフルエンサー発の動画のなかで文脈に乗せて商品を紹介するような手法が増えました。 栃尾 もともとファンをたくさん持っている配信者が、商品を使ってレビューする、といったタイプの動画ですよね。 木村 YouTuberたちがこぞって「企業案件」という言葉を使い始めたのがその頃。ところが、ファンはその人が作った動画が見たいのであって、商品の宣伝を見たいわけではない。企業案件を配信するとファンが離れてしまうという課題がありました。 栃尾 確かに、興ざめしてしまいますね。 木村 その後、企業の方も「自分たちでコンテンツを作らなくてはいけないんじゃないか」と気付き始めた。Webの流れと似ていますね。ホームページを作って、ブロガーにレビューしてもらう流れを経て、その次にオウンドメディアが流行りました。オウンドメディアでは、あからさまな宣伝ではなく、コンテンツの中にプロモーションをさりげなく織り込んでいますよね。YouTubeも同様です。 栃尾 アナリティクス機能が充実してきたのも、ブームが過熱する理由のひとつかなと思ったのですがいかがですか。 木村 2019年の2月ごろからYouTube Studioの機能が充実しはじめ、細かな分析ができるようになりました。インフルエンサーのチャンネルに出してもらうだけでは、視聴者の反響がわかりませんから、自分たちで配信してデータを取れるメリットは非常に大きいんです。 YouTubeなら、本当に伝えたいことが好きなだけ伝えられる 栃尾 YouTubeは、掲載が無料でも、運営していくにはある程度のコストがかかります。それでも、企業がYouTubeを始めたほうがいいと思いますか? 木村 動画でユーザーとコミュニケーションしたいなら、始めた方がいい。今まで、動画を配信するのは基本的にテレビCMしか選択肢がありませんでした。ところが、ユーザーが商品を買う理由って、CMで見るような内容だけでは足りないんですよ。 栃尾 確かに、15秒や30秒では印象しかわかりません。 木村 努力している企業ほど、技術力やこだわりポイントといった「テレビCMにはならないネタ」が豊富で、コアなファンほど、この部分が購入の理由になってくる。だから、メーカーなどは本当にYouTube向きだと思いますよ。 栃尾 いわゆるYouTuberは商品のレビュー動画を投稿していますが、メーカーには商品開発に至る背景やこだわりなどレビュー以外の情報が豊富にありますね。 木村 そうなんです! 視聴者は口コミやレビュー動画を信頼していない、というデータもあります。裏を返せば、企業が配信している動画の方が、実は信頼の度合いが高いとも言えるんです。 栃尾 確かに、購入を検討している商品があったとき、レビュー動画だけでなく、公式の動画もちゃんと見たいですね。 木村 メーカーさんは、短いCMでは省略されてしまうような、言いたいことやこだわりがたくさんあると思うんです。先日、パソコンを買おうと思って調べていたのですが、メーカーさんの公式動画がない。なぜ制作しないんだろう、って思いましたね。 企業や商品の裏側を伝えるために、YouTubeは最適。特に品質へのこだわりが強い国内メーカーなどにはぴったりだという。広告では省略されてしまうような内容を、じっくりと伝えることができ、それを知りたいユーザーもいるからだ。次回は。企業がYouTubeを始める際に担当者が気を付けることを聞いた。 Facebook-f Twitter 木村健人さん1988年生まれ。広島県福山市出身。サンフランシスコ州立大学芸術学部卒。ゲーム制作会社、IT関連会社を経て、動画SEOの黎明期の2016年にYouTube動画SEOサービスを開始。メーカーを中心に企業公式YouTubeチャンネルを手掛け、視聴回数を大幅に改善させる。著書に『広報PR・マーケッターのための YouTube動画SEO最強の教科書』(秀和システム)がある。 栃尾江美ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも 次回>> 第2回 商品に対する「必要性」と「欲求度」でターゲットを分類 1 2 3 4 次へ>>