未経験から大ヒット! 成功者が教えるPRのコツ

第3回 企業のSNSは「上顧客を育てる」強力なツール!

『0円PR』の著者である笹木郁乃さんのPR手法をお伺いするインタビュー。3回目の今回は、もはや外しては考えられないSNSについて。TwitterやFacebookなどのSNSは、企業としてどのように活用していけばいいのか。万能ではない側面と、SNSでなければできない役割を明確にしながら教えてくれた。

SNSは万能ではない! 認知を広げるのはメディア
栃尾

SNSマーケティングが注目されていますが、SNSをどのような位置づけでとらえればよいのでしょうか?

笹木

まず、商品を認知させるためにSNSを使うのは簡単ではありません。圧倒的に認知させたいなら、やはりメディアの力を使った方がいいんです。

栃尾

今でもやはりそうなのですね。そこは、かなり誤解されている方が多そうです。

笹木

売り上げを伸ばすのはメディアPRと考えてください。多くの人にリーチしたいならマスパワーは必須です。

栃尾

メディアPRと広告とで売り上げが伸びている企業も、SNSって必要ですか?

笹木

「パレートの法則」ってありますよね。2割の顧客が売り上げ全体の8割を占めるという話。そう考えると、やはりその2割のロイヤリティが高い上顧客を育てることは大事だと思います。

栃尾

なるほど! 役割が違うのですね。

笹木

SNSは、メディアで伸ばした売り上げを存続させるために使います。「ファン化」や「上顧客を育てる」イメージですね。使ってくれた人に「いいね」やリプライをしたり、良いコメントはリツイートしたりしていきます。

栃尾

私も感想を書いたメーカーさんに「いいね」やリプライをしてもらったことあります! うれしいですよね。

笹木

そうすると、また投稿しようかなという気持ちになると思うんです。売り上げを拡大するほどバズらせるのは実際難しいので、それよりも濃いファンの方と交流をする場だと捉えると割り切った方がいいと思っています。

SNSでの発言は、同じジャンルの本棚をイメージして!
栃尾

企業がこれからSNSを始めたり、今やっているアカウントを改善したりする際、どんなことに気を付ければいいのでしょうか?

笹木

よくある間違いは、「ブランドイメージを保とう」と考えすぎてしまうこと。例えば、Twitterの投稿内容を、まるでホームページかのようにしっかりと作り込んでしまうんです。

栃尾

それは手間がかかりますね……。

笹木

手間がかかるだけでなく、様々な人の承認やチェックを受けているうちに、無機質なつまらないものになってしまう。ただの情報ならホームページで見ればいいわけで、そうではなく「人が話す体温が感じられるから面白い」という共感を刺激する部分を出していったほうがいいですよね。

栃尾

担当者を決めたら、ある程度任せる必要があるんでしょうか?

笹木

そうなんです。私も、自由にやっていた時は伸びたのに、上司の承認が必要になってから急に伸びなくなった経験があります。特に、SNSの特性や文脈をあまりわかっていない上司がチェックするようだと、広がるのは難しいでしょう。スピードも落ちますし、人間味が消えてしまいます。

栃尾

とはいえ、投稿内容は悩んでしまうものだとは思うのですが、どのように考えればいいのでしょうか?

笹木

企業や商品にもよりますが、基本的にはフォロワーさんに役立つ情報ですよね。「新商品発売しました!」という情報は、発信している側は相手の役に立つと思っているかもしれませんが、そうではないんです。例えば「バーミキュラでのおいしい料理の作り方」だったら、欲しくなるだけじゃなく、持っていない人のヒントにもなります。

栃尾

「役に立つ」は重要ですよね。今の例は商品を使った情報でしたが、商品に直接的に絡んでいない投稿はやった方がいいのでしょうか。

笹木

例えば「お鍋料理」や「冬のあったかレシピ」など、商品が絡まなくても大丈夫です。投稿内容を考えるときには本屋さんの「棚」を想像してみてください。本屋で棚を見ている人は「料理の情報」が欲しいのであって「バーミキュラの情報」が欲しいわけではないんですよね。

栃尾

なるほど! 書店の棚の例えはわかりやすいです!

自社アカウントに加えて、社長アカウントも持っていた方がいい
栃尾

アカウントの位置づけですが、企業単位、サービス単位にするのか、あるいは社長の個人アカウントとして運営するのか、どの選択肢を選ぶべきなんでしょうか?

笹木

それも企業や業種にもよりますが、社長のアカウントはあった方がいいですよ。それは、採用に役立つからです。社長のパーソナリティや、ビジョンや考え方などがわかると、「この会社は自分に合いそうだ」と思ってもらえるんですね。

栃尾

きれいなホームページの情報より、社長が日々ツイートしていることの方が信頼できる気がしますね。

笹木

これがうまく回って行けば、小さい会社でも有名企業から転職してくれる人が現れますよ。

栃尾

メッセージやビジョンが自走して広がるということですね。商品を売りたい場合には、企業アカウントがいいということでしょうか?

笹木

そうですね。これも状況によりますが、自社アカウントやブランド単位、商品単位のアカウントを育てる必要があるでしょう。

栃尾

その場合、いわゆる「中の人」のキャラを出していった方がいいのでしょうか?

笹木

そのほうが、「ファン化する」という意味ではいいのですが、「中の人」は残念ながら誰にでもできるというわけではないんですね。センスや適性があるんです。

栃尾

どんな人が向いているのでしょうか?

笹木

自己開示が好きで上手な人です。やはり適切な自己開示がSNSでは大事。自分のことを知ってもらうことに喜びを感じられる人には適性があると思います。自己開示できない人は、事実の羅列ばかりになってしまって「中の人感」や人間味を出していくのは難しい。

栃尾

そういう適性のある人って見極めることはできるのでしょうか? 会社で話しているだけではわからないような気がします。

笹木

そうですね。人選が大事なのですが、見極め方が難しいという話をよく聞きます。例えば、チャットなどの社内コミュニケーションツールで雑談スレッドのような発信する場を作って、そこで自己開示が上手だったりセンスがあったりする人はいいかもしれませんね。あとは、セミナーを受けてもらったときに「このセミナーを誰かに紹介するつもりで感想を投稿してみてください」と試しに書いてもらうと、SNS適性人材を見つけることができたりしますね。

企業のSNS活用は、企業アカウントに加えて社長アカウントもあった方がいい。社長アカウントは、採用に効くからだ。一方で企業のアカウントでは、適任者がいれば「中の人」の自己開示を適度に含めた方がいいのだとか。次回は、これからのPRに注目されるメディアについて伺う。

笹木郁乃さん
会社員時代、創業期2社のPRを担当。株式会社エアウィーヴ 5年で1億→115億に貢献。愛知トビー株式会社(バーミキュラ製造販売)1年関わり、12ヶ月待ちの注文殺到に。その後、PR代行事業を立ち上げる。また、自身の10年間のPR経験より構築した独自のPR理論をコンテンツとするPR塾を主宰。延べ330人以上の起業家、経営者、PR担当者にPRを指導、14期連続満席にて開催。著書に『0円PR』(日経BP社)。

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも