クラウドファンディングは、ページを作れば自動的に支援者が現れるわけではない。すでにファンのいる企業であっても、根回しやSNSの活用はとても重要。通常のやり方では届かないような人にも届けるために、どうやって盛り上げていけばいいのか。クラウドファンディング・アドバイザーとしていくつものプロジェクトを成功させてきた ぺー さんに伺った。
目標金額は可能な限り低くする
目標金額の設定って難しいと思うのですが、 ぺー さんはどう考えていますか?
クラウドファンディング(以下、クラファン)の一覧ページを見てみてください。実は、ここには目標金額は出ていないんですよ。集まった金額と、達成率だけが見られる。例えば、達成率30%のプロジェクトと、3000%のプロジェクトが並んでいたら、どっちをクリックしたいですか?
3000%!? それっておかしくないですか? 気になります。
「桁が違うじゃん! どれだけ流行ってるの?」って思いますよね。これ実は、ふたを開けると目標金額が低いんですよ。数万円とかもある。
えー!
第2回目で説明した「All in」の場合、目標金額はプロジェクトの達成に関わりがないわけです。達成してもしなくてもお金はもらえるので。では何に関わるかと言うと達成率の「見え方」。盛り上がっているとか、流行っているという「見え方」にできれば、「良いものに違いない」「いい波に乗りたい」という心理が働きます。逆に達成率がまだ数%程度だと、不安になって支援されにくいんです。栃尾さんもガラガラでお客さんが全然いないラーメン屋より、行列ができているラーメン屋の方が「美味しいに違いない」と思って食べてみたくなりますよね?
すごくわかる気がします! でも、低ければいいってわけでもないですよね……? 実際に価格を決めるときには、何を目安にしたらいいのでしょうか?
嘘のない範囲で、低めに設定するのは問題ないとアドバイスしています。嘘だってわかるような金額だとそれも興ざめですからね。低くしておくと、「初日に達成!」というニュースを作り出すことができ、盛り上がっていることをアピールできます。それに、クラファンのプラットフォームの方で「急上昇」として取り上げられたりするなどの好循環も生まれます。
ファンを巻き込むSNS戦略
クラファンをスタートする前と後で、どんなことをすればファンを巻き込めるのでしょうか?
事前に周囲の人や支援してくれそうな人に声をかけることが大切。例えば「50名くらいは支援してくれそう」というあたりを付けておきます。仲のいい人には、会った時やDMで直接依頼してもいい。「Yes」という返事を取り付けるのがベストですね。その時に、なんとなく、イメージとしてリターンの種類を説明しておいたり、高額な支援をしてくれそうな人にはその旨を伝えたりしておきます。
仲のいい人を押さえておくのですね! SNSで周知するようなことも必要ですか?
もちろん! SNSで「〇日からクラファンスタートします! 待っていてください。初日が大事です!」などと伝えておきます。さらに、Twitterで商品やサービスに興味のありそうな人をエゴサーチして、個別にリプライを送ってもいいですね。「〇日からクラファンをやるので、よければ支援してください」みたいに。面倒な作業なんですが、その分効果があります。その商品や会社のファンであれば、公式アカウントからリプライされたら、嬉しいはずなんです。
確かにそうですね。スタート前はそれでいいとして、その後も、盛り上げ続ける活動がいるのですよね……?
開始後も大事です。まずは支援者の「支援しました」というツイートをひたすらリツイート。さらに、目標金額の50%や、100万円達成といった、キリのいい報告を逐一していくこと。活動報告や、SNSなどですね。他にも、「大型のリターンを支援いただきました!」とか、盛り上がっている感を出していきます。「自分も乗り遅れないようにしなきゃ」という気持ちを持ってもらえるように。
追い込みや追加リターンも丁寧に
終了間際も支援額が延びるイメージです。その際のコツはありますか?
支援したいと思っている人の中にも「リターンに迷っている」「まだ時間があるからいいや」という人が一定数います。そういう人に改めてリマインドしてあげることが大切。終了日の1週間前くらいになったら、「あと〇日で終了です」を毎日SNSに投稿しましょう。これまでクラファンをいくつもやっていますが、必ず終了日の後に「うっかり支援を忘れてしまったのですがどうにかなりませんか」という人がいる。そういう人をサポートする意味でも、しつこく告知した方がいいんです。
なるほど。終了日間際の追い込みで思ってもない金額に達することってあるんでしょうか。
うーん。実は、初日の金額で、トータル金額はだいたい読めるというのが実情です。
ええー! すごい。
クラファンって、初日に支援が一番きて、開始3日間でだいたい勝負が決まるんです。そして最後の3日間で駆け込み支援が少しある。なので、特段頑張って何もしなければ、初日支援額の3倍から開始3日間の2倍くらいの間の金額で不思議なことにフィニッシュする法則があるんです。例えばそれで金額を想定しておいて、足りないとなれば他の施策を打たないと。
そ、そうなんですね。例えば、どんな施策があるんですか?
ひとつは、追加リターンを設定すること。初日では用意されていなかったリターンを、途中から新規に作るケースです。リターンに魅力がなくて支援されてない可能性もあるので、より魅力的な追加リターンを設定するのがいいですね。あと、よくあるのはストレッチゴールを設定すること。「いったん目標金額は達成したけど、その先のストレッチゴールまでいけば別のことが実現できる」という目標ですね。追加リターンの施策と組み合わせて盛り上げていきます。
既に支援してしまった人もいるから、追加リターンって難しそうですね。
既に支援した人が損をするような設計をしてはダメです。「最初のリターンよりもさらに割安」といったものはNGですね。既に支援した人でも再度「おかわり」で支援したくなるような魅力的なリターンが求められます。いずれにしても、すべてにおいて、ファンの心理をよく考えて設計することが大事になってきます。
さまざまなニュースやネタを随時報告していくことで、SNSでファンを巻き込むことができる。また、DMやイベントなどでの根回しも大切だということがわかった。最後に、クラウドファンディングの醍醐味を聞くと、「金額や人数など、目に見えてわかるのが面白い」という ペー さん。まだまだクラファンに初めてチャレンジする人も多いため、アドバイスやサポートを続けていきたいという。
ぺー@クラウドファンディング・アドバイザー
今までにクラウドファンディングを2度実施し、合計4,500万円、7,000人以上の支援を集める。その時のノウハウを元に、クラウドファンディングに挑戦したい人に対してサポート・コンサルティングをしている。マーケティングの他、iPhone(スマホ)に詳しく、行政書士の資格を持つなど多彩。プロフィール画像は、漫画家三田紀房先生のドラゴン桜2が好きで描いてもらったもの。noteでクラウドファンディング基礎講座(https://note.mu/peee)を連載中。問い合わせはTwitterのDMで https://twitter.com/pe_e_chan
栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも