健診に新たなマーケティング思考で挑戦

第1回「スタートレックのような健診」から構想がスタート

個室で人間ドックや健診が受けられるという「カラダテラス海老名」。その健診用施設を立ち上げたのは、社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス(JMA)だ。医師や看護師が受診者の個室を回るという、医療業界では画期的なこのシステムをどう形にして、どう広めていくのか、カラダテラス海老名 管理部 部長の小松英之さんに伺う。第1回目は、「カラダテラス海老名」の構想から実現までを聞いた。

「スタートレックのような」という共通のイメージで動きやすく

栃尾:
個室で人間ドックが受けられるという画期的な「カラダテラス海老名」ですが、その発想のきっかけは何だったのですか。

小松:
これからの日本全体でどんどん医療費がかさんでいく中で、国の方針としても、ヘルスケアに力を入れなくてはならないと考えています。JMAでも、理事長を始めとして「ヘルスケア事業を強化したい」と考えているところに、それまでの健診センターが移転しなくてはならないことになった。そのまま移転するより、新しいことを始めようという発想になったんですね。

栃尾:
「新しい健診」ですか?

小松:
私の上司が「未来の健診をやろう」と発案して、そのイメージが「スタートレックの映画に出てきそうな健診」だと言うのです。「寝たら全て終わっているようなもの」というイメージです。

通常、健診センターと言えば、受診者の方が長椅子に座って、名前を呼ばれたら次々と健診用の部屋に入っていきます。医師と看護師は同じ場所にいて「〇〇さーん」と呼ぶわけです。例えば、人間ドックなら数万円という費用を払っておいて、そんな不親切なサービスってないな、と思ったんです。

医師や看護師から反対にあうも、「可視化」により実現可能性を伝える

栃尾:
そこから、個室で受ける健診という発想になったのですね。

小松:
まずは「本当にできるんだろうか」というところから。例えば、身長や体重は寝ながらでは測れない、聴力も難しそう、と考えていき、それでも大半はできるのではないかと考えました。

ただ、医師や看護師からの抵抗は強かった。考え方をこれまでと真逆に変えなくてはならないから、受け入れにくいんです。まず、物理的に無理だと思っている。でも、病院で入院されている方には、ベッド横、ベッドまで回っていきますよね。それを説明すると、「確かに」とは思うようです。

また、医師や看護師と、受診者さんの動きを5分刻みで可視化したタイムスケジュールを作成しました。それを見ると、担当者は自分の動きが一目でわかって、他の人と被らずにこなせるということがわかります。また、これにより何人まで受診者さんを入れられるのかも見えてきますね。

「受けたくなる健診」にすれば結果的に広まる

栃尾:
医師や看護師の方を説得できてからはスムーズでしたか?

小松:
実際の動きをシミュレーションするトライアルは、正味10時間程度。すごくスムーズでした。受診者さんにはiPadを持っていただくのですが、「検査機器」とiPadをバーコードで連携させてから測定すれば、結果がそのままiPadに表示されます。従来のように、紙が出てきて、それをメモして……という作業は不要です。健診用のシステムを購入して、個室で対応できるようにカスタマイズしてもらいました。受診者さんが結果をすぐに見られて、さらに時間が空いたらiPadで雑誌も読めます。

健診って、「会社から言われたから行かなきゃ」「健康のために行っておかなきゃ」という感覚だと思うのです。でも「受けたくなる健診」なら、おっくうでなくなりますよね。

個室にしてiPadを導入したことで、それまで半日~1日がかりだった人間ドックが、1時間半で終わるようになったんです。そういう意味でも、「受けたくなる健診」が実現できているのではないかと思います。

小松英之
社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス経営企画本部事業開発推進部。
経営企画、新事業開発の他広報活動にも携わる。

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも