コロナ感染者のペットを守る「#StayAnicom」の裏側

第1回 ペット保険を中心に幅広く。ペットと飼い主のために

ペットのための保険や動物の医療研究など、ペットとその飼い主のためにさまざまな事業を展開しているアニコムグループ。コロナ感染者のために無料でペットを預かる「#StayAnicom」プロジェクト(https://www.anicom.co.jp/release/2020/200410.html)は、ペットを飼っている人にとって大きな安心感となった。アニコム先進医療研究所の代表取締役社長、河本光祐さんに、プロジェクトの裏側を聞いていく。第1回は、アニコムグループの事業や、最近のペット事情について伺った。

ペットを総合的に守る事業を

栃尾:
アニコムグループさんの事業の中心は「ペット保険」かとおもいますが、他にも事業を展開なさっていますよね。

河本:
アニコムの中核がペット保険です。人間でいう健康保険のような制度を、動物にも提供しています。保険に限らず、ペットに関連する事業であればあらゆるものにチャレンジをしています。ペットショップ支援やペットフード、サプリなどのほか、動物病院を経営しているのも特徴です。

栃尾:
「ペット」という観点で、さまざまな事業をなさっているんですね。どういった点が強みなのでしょうか。

河本:
ペットに絞っていることがひとつの強みです。加えて、商品開発や研究開発ですね。人の場合、病気や食べているものの情報などがセンシティブな領域になり、商品開発、研究開発のハードルが高い。ペットに関してはパーソナル情報の取り扱いがそこまでではないので、さまざまな切り口で研究開発ができます。

栃尾:
確かに、人の場合は医療系など特に難しそうですね。

河本:
そうなんです。また。動物の命は人よりはるかに短いので、さまざまなライフイベントに、早くタイムリーに対応できるという特徴もあります。

栃尾:
保険をメイン事業としていながら、R&D事業も手掛けているのはなぜですか?

河本:
もともと、保険を提供することが私たちの主たる目的ではありません。病気になったときにその費用を負担するだけでは、動物や飼い主のためとは言えないと考えているんです。

栃尾:
そもそも、保険業が目的ではなかったんですね。

河本:
保険を通じて、事故や病気の情報をたくさん手にすることができます。それをもとに、事故や病気が起きないような仕組みを作ることこそがアニコムの使命だと考えています。それが創業の想いなんです。そのために様々な研究開発を行っており、これらを活用して保険の概念を変えたいと思っています。

栃尾:
病気や事故が起きてしまった後にお金でサポートするだけでなく、もっと包括的にペットと飼い主さんの暮らしをアクティブケアしたいという思いなんですね。

河本:
例えば、私たちが病気を防ぐ方法を見つけたり、直す薬を開発すれば、それにより収益を得ることができます。さらに病気が減り保険金の支出が減ります。開発した商品の利益だけでなく、全体として事業がよくなっていくので、収益性の高い研究開発が期待できるんです。

栃尾:
なるほど! 良いことしかないというわけですね。

ペットは人間のかけがえのないパートナーに

栃尾:
コロナ禍で、動物を飼い始めたという知人の声も聞きます。ペットがかけがえのない家族になっている人も増えているでしょうね。

河本:
ペットは長いこと人のパートナーとして共に生活してきました。それ自体は昔も今も変わりありませんが、パートナーとしての在り方は変わってきています。もとは「番犬」のように役割があり、仕事をお願いしていたわけですが、今はそうではありません。

栃尾:
癒しや愛情という観点ですよね。

河本:
ここ10~20年で、家族に近づいています。利害関係ではなく、愛情のような部分でつながりが深まり、かけがえのない存在になっていますね。

栃尾:
特に、コロナ禍で変わったことはありますか?

河本:
人々は家で過ごす時間が増えて、他の人と接触する機会が大幅に減りました。フィジカルな他者とのつながりが減っています。それでもぬくもりや温かさを求める人にとって、動物と暮らすという選択肢が浮かび上がったわけですね。

栃尾:
外で人に会えてもマスク越しだったり、距離があったり。家族くらいしかぬくもりを感じられない環境ですよね。

河本:
ペットを家族として迎え入れる人が増えています。人の心が不安定になっている中、ペットがそれを支えてくれているわけで、よりニーズが高まっていると言えますね。

コロナ禍で、ペットの需要はますます高まり、人にとって大事な家族に近づいているという。第2回は、「#StayAnicom」がスタートした経緯と、実現できた理由などを伺っていく。

河本光祐さん
岩手大学農学部獣医学科卒業後、岐阜大学大学院連合獣医学研究科にて博士号を取得。2011年アニコム損害保険株式会社に入社、給付や経営企画、獣医師としての臨床業務など幅広く従事。
現在はアニコム先進医療研究所の代表取締役社長を務める他、再生医療の研究を行うセルトラスト・アニマル・セラピューティクス株式会社の取締役も兼任する。

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも