UXデザインで変わることと変わらないこと
第3回 経営者や同僚の理解を得て、サポートや協力をしてもらう
Webメディアやポッドキャストなど、自ら精力的な発信を続けているデザイナーの長谷川恭久さん。大企業からの依頼も多いが、「このように発注してもらえると効果的」というおすすめがあるという。また、特に大切にしているのはステークホルダーの理解だ。実は、人間関係や交渉事で、課題解決のコストは大きく変化してしまう。プロジェクトをスムーズに進めるうえで、欠かせない部分を伺った。 やり方からしっかり相談した方がむしろ低コスト 栃尾 企業がUI/UXデザイナーさんに依頼をする場合、どんな発注の仕方をするといいんでしょうか。 長谷川 手段を目的としないほうがいいとは説明しましたが、「Webサイトを作りたい」と手段を決めすぎない方がいい。「課題があり、解決のためにWebサイトを作るのがいいと思っているけどどうですか?」と相談していただくのがいいと思いますよ。 栃尾 Webサイトを作るつもりだったけど、解決策は違った、というケースがあるんですか。 長谷川 多分にありますよ。調査をして違うとわかれば、こちらから別の提案をします。例えば営業の方が提案しやすくなるようガイドブックのようなものを作るというケースもあります。 栃尾 発注側としては、ぼやっとした状態で相談するのは費用面が気になるのではないかと思うんですが……。 長谷川 確かに予算をどう決めるかは難しいですよね。ただ、コストのとらえ方にもよります。「Webサイトを作る」と決めて発注すれば一見安いかもしれませんが、成果が出なかったらむしろ高い買い物です。それよりも、抜本的な解決を求めて時間をかけてやるほうが結果的には安くなるとも考えられます。 栃尾 確かに、効果が出なかったらお金を捨てているようなものですね。 長谷川 僕の場合で言うと、相談してもらえれば、そもそもの課題は何か調査をして、仮説を提案した上で何を最初にすべきかお客様と一緒に考えます。Webサイトという提案をして、たとえ成果につながらなかったとしても、課題や仮説があればうまくいなかった理由を学習できますよね。でもただやみくもにWebサイトを作ろうと決めて実施しただけだと、何が悪くて何がよかったのかわからない。 栃尾 例えば「ニュースサイトを作る」という施策自体は間違っていなくて、ディテールが間違った場合でも、検証できないということですね。 長谷川 そうです。「ニュースサイトはダメ」という結論になってしまうのはちょっともったいないし、学びがない。もっと細かく、何がダメだったのかわからないと。 栃尾 積み重なっていかないですね。 長谷川 たとえ失敗してたとしても、学びのあるプロセスがあればサイトだけでなく運用しているスタッフのスキルアップに繋がると思うんです。 経営者やマネージャークラスの理解を得ておく 栃尾 他に、発注時の注意点はありますか。 長谷川 ステークホルダー(決裁者)とのコミュニケーションは先に握っておいてほしいです。 栃尾 コスト面が関係してくるということでしょうか。 長谷川 費用はもちろんですが、新しいチャレンジへの理解が必要だと思っています。やろうとしているゴールに理解があり、あわよくばバックアップしてもらえることが大事ですね。…