原体験から導くブランディング

第1回 経営者の想いをもとに、真似されないブランディングを

いくつもの企業のブランディングをサポートしたり、CBO(チーフ・ブランディング・オフィサー)として活躍しているチカイケ秀夫さん。SNSで日々精力的に発信し、ブランディングや原体験の大切さを伝えている。第1回目は、チカイケさんが企業に対して実施している支援の概要と、ブランディングの大切さを伺った。

ブランディングは一貫性が大切
栃尾

チカイケさんは、現在ブランディングを支援するお仕事をなさっているんですよね。

チカイケ

はい。6年ほど前に独立して、個人事業主を3年、法人化して今が4期目です。最初は「スタートアップのブランディングを当たり前にする」という目的で始めました。現在はスタートアップだけでなく、年商100億円くらいの企業のサポートもしています。

栃尾

何社くらいを同時並行でやるんですか?

チカイケ

だいたい10社前後ですね。

栃尾

独立前もブランディングに関わるお仕事だったんですか。

チカイケ

その前はGMOクラウドにいて、新規事業の立ち上げから、後半にはグループ全体の公募や福利厚生のプロジェクトなどに参画していました。グループ代表の熊谷正寿さんの社内プロジェクトとして、熊谷さんのもとでブランディングを学んだところは大きいです。

栃尾

現在のお仕事は、具体的にどんなことをしているのでしょうか。

チカイケ

CBO(チーフ・ブランディング・オフィサー)として入ることが多いです。定例ミーティングをして、ビジョンやミッション、理念などを策定していきます。「その企業がなぜ、何のために存在しているのか」という経営者の思いを言語化していくのです。

栃尾

言語化していく……。

チカイケ

はい。ブランディングは一貫性が大事です。コーポレートアイデンティティ(CI)、ブランドアイデンティティ(BI)、サービスアイデンティティ(SI)といろいろなレイヤーがありますが、すべてが地続きで一貫性があるようにしていきます。

その企業だけの「価値」があれば、商品だけを真似されても差別化できる
栃尾

ひとつの企業とは、どれくらいの期間でサポートすることが多いんですか?

チカイケ

ポイントで入ることもありますが、56年続くこともあります。初期の頃はワークショップ形式で、何時間もかけてやることも。課題の深掘りをして、今の状況を確認していきながら、経営や戦略、作戦、戦術といったすべてのプランニングにつなげていきます。

栃尾

これまでの仕事で、代表的なものはありますか。

チカイケ

たとえば、ロッキンプール(https://rockinpool.com/)という会社。プールに関する事業をしており、最近透明プールマスクを販売しました。これはテレビなどにも取材されています。

栃尾

透明プールマスク……?

チカイケ

水泳指導者向けの透明なマスク「プールマスクマン」という商品なんです。この商品自体は、すぐに真似をされるかもしれません。実際に偽物も出てきています。ところが、ロッキンプールという会社が作っているのはただの透明マスクではないんです。安心安全にプールを楽しんでほしい、という思いでこの商品を売っている。

栃尾

それによって、真似されても怖くない、ということなんですか?

チカイケ

僕は究極、商品や物を売ってはいけないと思っています。社会的に見た価値を訴求していかなくては、特別な存在になれません。今まで積み上げてきたブランドを軸に、プール市場、スポーツ市場のために商品を販売していると伝えていかないと、消費者から見て区別がつかないんです。

栃尾

確かに、商品が真似されたら終わり、というビジネスは厳しいですよね。

チカイケ

物ではなく、自分たちが取り組んでいる事業全体の存在意義を考えていきます。プール業界のために取り組む事業の一環として、安心安全を確保したい。だからプールマスクマンを販売する、という流れですね。

ブランディングは目に見えづらいものの、企業としてはとても大切だ。次回は、コーポレートアイデンティティを策定するときに欠かせない「原体験」について伺っていく。

原体験ドリブン 人生の答えの9割がここにある!
チカイケ秀夫(著)

チカイケ秀夫さん
PERSONAL VENTURE CAPITAL. LLC代表。20代WEB系デザイナーにはじまり、ディレクターから、一部上場IT企業グループ、複数のベンチャー立ち上げに携わる。上場企業の理念策定や、代表直下プロジェクトマネージメントとブランディングを経験し、スタートアップに特化したブランディングで起業。現在は、スタートアップに特化した企業のブランディング・パートナー/社外CBO(最高ブランディング責任者)として常時10社ほどをサポート。累計100社ブランンディングに関わる。

栃尾江美
ストーリーと描写で想いを届ける「ストーリーエディター」。ライターとして雑誌やWeb、書籍、広告等で執筆。数年前より並行してポッドキャスターも